AIを活用した金属製品・金属部品の外観検査とは

金属部品

1. 金属製品・金属部品の外観検査とは

外観検査とは、製品や部品の品質確保のために、外観からチェックを行う検査業務のことです。金属製品や金属部品の外観検査では、製造工程中に発生したキズや打痕、塗装不良などの欠陥を発見し、不良品を排除します。具体的には、以下のような不良・欠陥を検出します。

主な金属製品・部品 不良・欠陥例
ボルト、ネジ、ワッシャー、ベアリング、バネ、スプリング、ナット等 キズ、打痕、溶接、ヒビ、錆、(塗装)色ムラ、割れ、欠け、バリ、汚れ、凹み等

 

外観検査の最も基本的な手法は、人の目による目視検査です。また、現場によっては検査装置による外観検査の自動化も進められています。

2. 金属製品・金属部品の外観検査の従来手法と課題

ここでは、従来的な手法である目視や検査装置による金属製品・部品の外観検査の概要と、その課題について解説します。

目視検査の概要と課題

目視検査は最も基本的な外観検査の手法です。目視検査では、目視にて金属部品をチェックし正常か不良かを判断します。小さな金属部品や、欠陥箇所が微細な場合には、検査精度を高めるために拡大鏡や顕微鏡を用いるケースもあります。

目視検査は、検査設備が不要であり導入が容易であるというメリットがあります。一方で、以下のような課題もあります。

  • 人手不足に伴い、経験豊かな検査員の確保が難しい
  • 金属部品の微細な傷や汚れの検査を目視で行うと人間の感覚で合否判定を行うため、ヒューマンエラーが発生しやすい
  • 精神的・身体的疲れによって作業精度が下がる・スピードが遅くなる
  • 検査員が検査対象物を直接手に取り、360°角度を変えて目視検査する場合は、時間がかかる

検査装置(検査機)による検査の概要と課題

目視検査の課題を解決するために、検査装置を導入して金属製品・部品の検査を自動化するケースもあります。検査装置では、ルールベースで不良品の判定を行うことができます。ルールベースとは、あらかじめ判定基準を検査装置に設定し、そのルールに合致するかどうかで判定を行う方法です。金属製品・部品の検査を行う場合には、表面の状態、形状、色などをルールとして設定します。

検査装置の導入には一定のコストが発生しますが、検査速度の向上や人手不足への対応など、目視検査の課題を解決することができます。しかしながら、微細な欠陥を判定する必要のある金属製品・部品の検査を検査装置で行う場合には、以下の課題も残ります。

  • 金属製品・部品のキズや打痕は様々な形状で発生するため、バリエーションが多く、明確にルールを定めることは困難

3. 金属製品・金属部品の外観検査へのAI導入

近年では、AI関連技術が発展し、製造業においてもAIの活用事例が増えてきています。金属製品や金属部品の外観検査は特にAIの活用が期待できる分野です。ここでは、AIを活用した外観検査の概要と、当社のAI外観検査用パッケージソフトである「InspectAI」の紹介をします。

一般的なAIによる金属部品の外観検査の概要

人があらかじめ設定したルールベースで判断する検査装置とは異なり、AIは明確なルールで正常品・不良品を定義する必要がありません。事前に読み込ませた画像データからAIが自動で正常品・不良品の特徴を抽出することで判断できるようになります。

従来手法による外観検査の課題をAIにより解決

上述したように、目視検査には課題がありましたが、金属製品・部品の外観検査にAIを活用することで、それらの課題を解決することができます。

目視検査での課題
  • 人手不足に伴い、目視検査を行う人員の確保が難しい
  • 金属製品・部品の微細な傷や汚れの検査を目視で行うとヒューマンエラーが発生しやすい、検査員毎の検査基準が異なる
AIによる解決
  • AIが検査を代行
  • 精度高く、検査基準の統一化が可能

同様に、検査装置による検査の課題も、AIの導入により解消することが可能です。

検査装置による検査での課題
  • キズや打痕は様々な形状で発生するため、明確にルールを定めることは困難
AIによる解決
  • 画像データに基づき適切なルールを学習するため、人間がルールを決める必要がない

「InspectAI」 でAI導入のハードルを大幅に低減する 

外観検査へのAI導入には大きなメリットがある一方で、一般的なAI開発では、「正常品・異常品の画像データを大量に準備する必要がある」「開発に時間がかかる」などの課題がありました。

アラヤの「InspectAI」(インスペクト・エーアイ)は外観検査用のパッケージソフトで、一般的な外観検査用AI開発の課題を解決し、AI導入のハードルを大幅に低減します。ここではいくつかある特長の中から主に、金属製品・部品の外観検査において最も重要なポイントをご紹介します。

正常品の画像データのみで学習が可能、1~2時間で運用が開始できる

一般的なAI開発では、大量の正常品・不良品の画像データが必要でした。特に不良品は発生頻度が低いため、画像データの準備が難しく、AI導入のハードルになるケースが多々ありました。
InspectAIでは正常品の画像データのみで外観検査を実現することができます。つまり、異常品の画像データは準備する必要がありません。
さらには、1~2時間で学習が完了するため、すぐに実運用が開始できます。

4. 金属製品・金属部品の外観検査におけるInspectAI活用例

ここでは、金属製品・部品の外観検査における、InspectAIの活用例を紹介します。

金属部品上の0.1mm程度のキズ・打痕も検出可能

金属製品や部品においてInspectAIで検出できる主な欠陥項目は、キズ、打痕、ヒビ、錆、色ムラ、汚れ、割れ、欠けなどで、0.1mm程度の微細な欠陥も検出することができます。

「InspectAI」による金属ボールベアリングの不良検知デモ動画

金属ボールベアリングの打痕の検知をInspectAIで行ったデモを紹介します。ルールベースの検査装置や従来のAIでは対応が難しい検査を実現しています。

  • 1mm以下の複数の打痕を検出
  • 検出難易度の高い微細なエッジ打痕も検出
  • 小さな埃や不良基準に満たない傷は過検出しない
  • 1つのAIモデルで表裏両面の検査に対応
  • 検査タクトタイム0.2秒以下を実現

「InspectAI」によるワッシャーの異常検知の検証結果

ワッシャーの異常検知をInspectAIで行った結果を紹介します。
329枚の正常品画像のみでInspectAIに学習をさせ、AIモデルを構築しています。その上で、学習時と異なる正常品画像32枚、異常品画像32枚をInspectAIにて判別させた結果、以下の通りの結果となりました。

金属部品外観検査

正常品画像のみによる学習にもかかわらず、誤検出率を0%とするように調整した場合、100%の割合で正常品・異常品を分類することができています。また、1秒当たり35.7枚の速度で検査が可能という結果となりました。InspectAIは、このように非常に高い検査精度と速い検査スピードを実現することができます。

複数面の同時検査に対応

InspectAIならではの特長の1つに、複数面の検査を同時に行うことができるということがあります。従来の目視検査で、人が検査対象品を手に取り様々な角度から確認をするようなケースは、多くの検査機器やAIソフトでは一方向からの検査にしか対応しておらず、代替が困難でした。

InspectAIでは、複数面を撮影するようにカメラを設置し、同時に検査をすることができます。これにより、検査精度の向上だけでなく、検査時間の短縮も実現します。

InspectAI

5. まとめ

この記事では、金属製品・部品の外観検査の概要から課題、そしてAI導入について解説しました。アラヤでは金属製品・部品の外観検査へのAI適用をサポートします。お気軽にご相談ください。

外観検査,InspectAI

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