2021.10.15 お知らせ

日本学術振興会の助成金による新しい研究を始めます

株式会社アラヤの脳事業研究開発室チームリーダー・近添淳一は、日本学術振興会の助成金「学術変革領域研究(B)」のサポートを受け、新たに発足する領域「情動情報解読による人文系学問の再構築」の領域代表として、プロジェクトを推進します。
このプロジェクトにおいては、脳機能画像情報から情動情報を解読し、人文系学問を情動を中心に捉えなおすことを目指します。

学術変革領域研究(B)について
「学術変革領域研究(B)」は、次代の学術の担い手となる研究者による少数・小規模の研究グループ(3~4グループ程度)が提案する研究領域において、より挑戦的かつ萌芽的な研究に取り組むことで、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを先導するとともに、我が国の学術水準の向上・強化につながる研究領域の創成を目指し、将来の学術変革領域研究(A)への展開などが期待される研究です。

取り組む研究の概要
心理学・言語学・経済学・美学といった人文系学問では、人間の行動やその記録から、心的プロセスのモデルを作ります。こうしたモデルを考えるにあたって、情動が人間の行動にどのような影響を及ぼすかを理解することが重要ですが、個人が「どのように感じているか」を直接計測することが難しいことから、情動の働きを直接モデルに取り込むことは簡単ではありませんでした。
機能的MRIは、生きた人間の脳活動を計測できる手法で、被曝などの心配のない安全な手法であることが知られています。近年、機械学習を使った解析技術の進歩によって、脳活動から個人の情動状態を推定することが可能になりつつありますが(Chikazoe et al., 2014; Pham et al., 2021)、解析上の技術的ハードルも高く、脳活動から推定した情動状態の情報を取り込んだ言語学・経済学・美学モデルはほとんどありません。
本研究領域においては、機械学習を用いた機能的MRI研究の専門家である近添(アラヤ)が中心となって、自然言語処理の専門家である持橋大地先生(統計数理研究所)とミクロ経済学の専門家である渡辺安虎先生(東京大学)、および美学研究の専門家である石津智大先生(関西大学)と協力し、情動から言語・経済・芸術を理解するような新しい学問の枠組みを作っていきます。

アラヤの研究チームリーダーである近添淳一のコメント:
これまでの人文系領域の脳研究は、それぞれの領域で提唱された概念(倫理的葛藤や経済的合理性など)と対応する働きをする脳領域を探すことを目指してきました。しかしそれは、結局のところ、抽象的な概念を脳という具体的な構造物に置き換えることであって、興味深い研究ではあるものの、学問そのものを大きく前進させるほどのインパクトは望めませんでした。
今回発足した研究領域「情動情報解読による人文系学問の再構築」では、脳活動から解読した情動情報に基づいて、人文系の学問における新たなモデル、新たな概念を提示することを目指しています。このアプローチによって、オークション等の経済制度を人間の情動的反応に最適化した設計を可能にするなど、実社会へのフィードバックを意識した研究を進めて行きます。

審査結果の所見(学術振興会発表資料より):
本研究領域は、脳内情報処理機構を脳機能測定機器(機能的MRI)によって解析して変数として取り込み、認知過程、言語表象、経済活動、芸術活動を説明しようとする革新的な試みであり、神経科学分野から人文系学問(美学、言語学、経済学)の課題にブレークスルーをもたらそうとするものである。既存の学問分野の枠に収まらない、分野を超えた「情動情報学」の創成を目指すことにより人文系学問の再構築を提唱する本研究領域は、学術変革領域研究(B)としてふさわしい研究である。
これまで扱うことの難しかった人間の情動を対象とし、その基盤にある脳活動を生理学研究所の機能的MRIを用いて解明しようとする本研究領域の試みは、研究環境、研究手法、及びこれまでの研究活動から、実行可能性も高いと判断される。脳神経科学、及び、美学、言語学、経済学以外の人文系分野への波及効果も見込まれ、人文系分野全体に対する貢献も期待される。本研究領域の活動によって得られる成果・知見に期待するものである。

研究員またはインターンの募集
このプロジェクトを推進するにあたって、お手伝いいただける方(研究員、インターン)を、若干名募集しています。神経科学の知識は問いませんが、プログラミング経験のある方を優先的に採用します。積極的なご応募をお待ちしています。