画像認識AIの仕組みとは?導入ステップや活用事例も紹介

コラム 2025.09.25

製造業では、品質チェックや検品作業の際に「見落としミスが多い」「人手が足りない」などの悩みが多いようです。見落とし対応に時間や人手がかかる状態では、コスト負担も増えるでしょう。

近年、画像認識AIを使って、ヒューマンエラーや人手不足を解消する手法が注目されています。しかし、この画像認識AIを導入したくても仕組みがわからず、社内での説明が不安な方もいるのではないでしょうか。

今回は、画像認識の仕組み・活用事例・導入ステップなどを解説します。この記事を読むと画像認識に関する知識がつき、費用感も含めた導入判断ができるようになります。

画像認識とは何か|仕組みを解説

画像認識とは何か|仕組みを解説
新しい技術を導入する際は、まず仕組みを理解しておくことが重要です。ここでは画像認識の概要、処理の流れや処理タイプなどを解説します。

画像認識とは?

画像認識とは「人間の目が物体を識別する能力」を、コンピュータに再現させる技術で、パターン認識の一種です。カメラやセンサーから取得した画像をコンピュータが解析し、「何が写っているか」を認識します。

これまでの画像認識方法について

画像認識の元祖は、現代でもほとんどの商品についている「バーコード」です。スキャナが文字や数字を読み取れるよう、線の太さとスペースの組み合わせを用いて表したものです。

バーコードの登場以降、一般的に使われていたのは「テンプレートマッチング」という画像認識方法でした。
検出する物体の画像を見本(テンプレート)として、探索対象となる画像全体に照らし合わせながら、どこに何個写っているかを検出する技術です。

しかしテンプレートマッチングの場合、認識対象物ごとにテンプレートを用意しなければならないことや、テンプレート画像との誤差が大きい画像は認識率が下がるなど、不安定な面も多かったようです。

画像認識とAIの組み合わせ

画像認識とAIの組み合わせが本格的に活用されはじめたのは、コンピュータの技術が大きく進化し、データ処理の速度が向上した2000年代以降です。処理速度が速まったため、多量の画像データを機械学習できるようになりました。

その後、2012年に深層学習(ディープラーニング)の技術が開発され、画像認識の精度も格段に上がったといわれています。

画像認識とAIを組み合わせることで、これまでの手法では見落としやすい微細な欠陥や異常も検出可能となりました。この柔軟性が、製造現場の業務効率化や不良率低減などにつながります。

画像認識の処理の流れ

画像認識の処理と、システムの導入・運用までの流れは以下のとおりです。

  1. データ収集
  2. データのクリーニング(前処理)
  3. アノテーション(データへのラベルづけ)
  4. 機械(深層)学習
  5. 解析:推論(計算)
  6. 評価
  7. 運用

画像認識における「データ収集」とは、教師データとするための画像を集めることです。クリーニングやアノテーションを経たデータを使い、AIに学習させます。

AIが認識対象となる画像の解析・推論を実行した後は、画像認識の精度や誤判定の評価に移ります。実務に耐えうるようであれば本格導入し、現場で運用します。

画像認識の処理タイプ

画像認識の処理タイプには、分類・検出・セグメンテーションの3つがあります。

画像認識の処理タイプ1|分類:写っている物体の識別

シーン認識
画像全体の情報を理解して「シーン」を識別する
物体分類
画像の物体をカテゴリ別に分類して「写っている物体」を識別する

画像認識の処理タイプ2|検出:どこに何が写っているかを検出

物体検出
画像に写る対象物体の位置・種類・個数を検出する

画像認識の処理タイプ3|セグメンテーション:画像をピクセル単位で分割

インスタンスセグメンテーション
対象領域を特定した後、個体(インスタンス)ごとに分割し、対象の種類を認識する
セマンティックセグメンテーション
画像のピクセルごとにラベルづけする手法(重なり合う物体の区別は難しい)
パノプティックセグメンテーション
上2つの長所を合わせたような手法で、ピクセルごとにラベルづけをした上で、物体ごとの識別が可能

画像認識の目的によって、処理タイプを使い分けます。

業界別|画像認識の活用事例を解説

業界別|画像認識の活用事例を解説
画像認識はどのような業界で活用されているのでしょうか。
こちらでは製造業界、自動車業界、小売業界・物流業界での事例を紹介します。

活用例1:製造業での外観検査・不良品検出

製造ラインにおける外観検査・不良品検出を検査員の目視で行う現場では、疲労や集中力低下などによる見落としに加えて、作業員ごとに、チェックの質に差があることが課題でした。

このような場合、製造ラインに画像認識AIを取り入れ、正しい状態の製品画像データを学習させることで、外観のキズ・欠け・汚れなどを自動検出できるようになります。その結果、24時間安定した精度で判定できる上、速度も向上します。さらに検査記録の保存・分析も容易になるため、不良原因の追跡や工程改善に役立つでしょう。

活用例2:自動運転でのリアルタイム物体検出

画像認識は、自動車業界では自動運転中の物体検出に活用されています。自動車に搭載された画像認識AIの役割は、走行中に周囲の歩行者・車両・白線・標識などを検出することです。AIがカメラやセンサーによって認識した画像を解析し、ドライバーのブレーキやハンドル操作をサポートします。

この技術は乗用車だけでなく輸送トラックにも活用され、適切な判断の基盤として事故防止に貢献しています。

活用例3:小売・物流の棚卸・荷姿判定

小売業や物流業界でも、店舗・倉庫における棚卸、荷姿判定などを行う際に、画像認識が活用されています。

従来の棚卸では人が商品の在庫を数えてリストと照合していたため、時間と人員が必要でした。しかしAIを導入すると、棚やパレットの画像撮影のみで在庫状況の解析できるようになり、結果として作業時間と人件費の大幅な削減につながります。

解析結果を在庫管理システムと連携させることで、自動発注や補充作業の効率化も可能です。

画像認識の導入のステップと費用内訳

画像認識の導入のステップと費用内訳
画像認識の導入ステップを簡単に書くと、次のとおりです。

  1. 業務課題の整理と目標の明確化
  2. PoCによる検証
  3. 本導入・運用体制の確立

章の最後に、画像認識AIの開発や運用に必要な費用内訳も記載しました。導入ステップと費用を知り、導入検討の際に役立ててください。

ステップ①業務課題の整理と目標明確化

画像認識技術を導入するためには、現状の業務課題を整理し、具体的な改善目標を数値で設定することが重要です。

【目標と数値の設定例①】

課題
不良品の見逃しが多い
目標
不良品の見逃しを減らす
数値
不良率を現在の5%から2%に削減する

【目標と数値の設定例②】

課題
検査に時間がかかる
目標
1製品あたりの検査スピードを向上させたい
数値
検査時間を30秒から10秒に短縮する

このように目標を数値化することで導入後の効果検証が容易となり、社内の理解も得やすいでしょう。

ステップ②PoCで検証

次に実施するのは、小規模なPoC(Proof of Concept:概念実証)です。PoCは、製品または現場のデータを使い、AIの精度や処理速度が目標数値に達したかを検証する、重要なステップです。

ステップ①で設定した目標数値とPoCとの差を分析し、必要に応じてシステムの調整や条件の見直しを行い、検証します。PoCを繰り返し行い、結果次第で導入可否を判断します。

ステップ③本導入・運用体制の確立

PoCで効果を確認して導入を決定したら、システムを現場に組み込みます。
導入後は画像認識AIの定期的なチューニングが重要です。チューニングとは、新たな対象画像・不良パターンの追加や、使用環境の変化に対するモデル更新などを指します。

現場担当者の教育やマニュアル作成などを行って運用体制を整えることで、画像認識の導入効果を長期間持続できます。

画像認識導入の費用内訳

費用の内訳を覚えておくと、自社での開発や委託会社を選択する際の目安になるでしょう。
画像認識システムは、開発規模によって費用が変わります。最低限の機能でよい場合は50~150万円ですが、複雑な機能を多く組み込んだ、規模の大きなシステムは1000万円以上かかるといわれています。

画像認識の導入にかかる費用の内訳を、工程ごとにまとめたものが下表です。

画像認識の導入にかかる費用

工程 説明 費用の相場
開発環境の構築
  • コンピュータの購入費用
  • 画像データ保存用のストレージ費用(月額)
  • クラウドサーバー利用料(月額)
50万円~
要件定義・コンサルティング
  • この段階で全体の計画を立てる
  • 自社の課題を分析する
  • 1~2ヶ月が目安
50万~300万円
AIの適合性チェック・PoC
  • AI化の可能性を検討する
  • 実用可能か検証する
  • 約3ヶ月
40万~500万円
教師データ作成
  • アノテーションは、データの量が多いほどコストが増える(50~200円×枚数)
  • 作成期間は2~6ヶ月
100万~2000万円
AIモデル開発
  • 開発する画像認識AIによって費用が変動する
  • 不良品検出を目的とする場合の開発期間は、約8ヶ月
300万~3000万円
既存システム連携・システム統合
  • 連携や統合が複雑であるほど費用がかかる
  • 3~8ヶ月
200万~2000万円
【導入後】運用・保守
  • システムを監視する
  • 障害対応をする
月額10万~100万円
【導入後】チューニング
  • AIの精度を上げるために再学習させる
  • 必要に応じて定期的に行う
年間50万~300万円

※記載の費用は相場です。実際の料金は依頼する開発会社によって異なります。

まとめ|画像認識の仕組みを理解して導入を検討しよう

画像認識とは、コンピュータが画像を解析して、その内容を認識する技術で、パターン認識の一種です。
画像認識とAIを組み合わせることで膨大な画像データから自動で特徴を抽出し、対象の識別や分類、検出、位置の特定を行えるようになります。

例えば製造業では検品作業、自動車の自動運転では周囲状況のリアルタイム検出などが可能です。ヒューマンエラーが解消されるため、コストの削減や品質の安定につながります。

画像認識AIは、業務課題の整理、PoCでの検証、現場への組み込み、運用体制の確立という流れで導入します。
ぜひ、画像認識の仕組みを正しく理解し、自社への導入検討に役立ててください。

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執筆監修

株式会社アラヤ

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