インフラ点検×AI活用術|画像認識技術で業務効率化を実現

人手不足や技術継承が課題となるインフラ業界では、AI導入による業務効率化が注目されています。
特にインフラ点検では、画像認識を活用したAI技術が有効です。
ここでは、インフラ点検におけるAI活用のメリットや導入事例をご紹介しています。AIを現場で活かしたい方はぜひ参考にしてみてください。
インフラ点検におけるAIの活用とは?

鉄塔や送電設備
インフラ点検におけるAIの活用とは、これまで人の目や経験に頼っていた点検作業を、カメラやセンサーを使ってAIが自動で判断・記録するしくみに変えることです。
これにより、作業の効率アップやチェックの正確さ、安全性の向上が期待されています。
インフラ点検におけるAIの活用とは?
今では、次のようなインフラ設備でAIが実際に使われています。
●道路や舗装のひび割れを自動で見つける
●橋のゆがみや劣化をAIで監視する
●鉄塔や送電設備のサビや腐食を検出する
●タンクの外観を画像でチェックする
●配管やパイプの漏れや劣化をAIが判定する
インフラ業界でAIが導入される背景
下記のような理由により、インフラ業界でAI導入が日々進んでいます。
●高品質なセンサーやカメラなどのハードウェアが、以前よりも手頃な価格で手に入るようになった
●点検で集めた大量のデータを、クラウドを使って簡単に保存・分析できる
●ディープラーニングや機械学習などのAI技術が進歩し、画像の判定精度が上がってきた
●国や自治体がAI導入を後押ししている(例:国土交通省の支援制度など)
たとえば、2021年に開かれた「第5回インフラメンテナンス大賞」では、AIを活用したインフラ点検の取り組みが4件も受賞しています。
これは、AIの活用がすでに現実のものとして社会で広がっているからともいえます。
今では、インフラ点検をAIで自動化することは、実験段階を超えて本格的に現場で使われる技術になりつつあります。
AIが解決してくれるインフラ点検の課題

橋梁
インフラメンテナンスの現場には、人手不足やコスト増加といった深刻な課題があり、それらを解決する手段として、AIの導入が進んでいます。
人材不足:点検現場を支える人が足りない
日本では、生産年齢人口の減少により多くの業界で人手不足が進んでおり、インフラ点検の現場も例外ではありません。
点検作業は、体力を使い、危険が伴うこともあり、若い世代から敬遠されがちな作業でもあります。
さらに、全国各地で老朽化した設備が急増しており、点検の必要性は高まる一方。
それにもかかわらず、点検員の数は減少しており、「設備は増える、点検する人は減る」という二重苦に直面しています。
こうした状況を受けて、AIを活用して点検業務を自動化・効率化する動きが急速に進んでいます。
これにより、限られた人員でも多くの設備を安全にチェックできるようになります。
点検品質の確保:技術者の減少とノウハウの消失
点検の現場では、経験豊富な技術者の高齢化と退職が進んでおり、「誰が正確に判断するか」という問題が深刻化しています。
若手技術者の育成が追いつかず、長年培われた熟練者のノウハウが引き継がれないケースも増えています。
その結果、「点検の品質が保てないのでは」という不安の声も。こうした課題に対し、AIやデジタル技術を使ってノウハウをデータ化・標準化する取り組みが注目を集めています。
AIを使えば、過去の事例や判断基準をもとに、熟練者の判断を再現し、誰でも一定レベルの点検が可能になる環境づくりが進められています。
維持・更新コストの増加と予防保全へのシフト
日本のインフラは、昭和時代に整備されたものが多く、今まさに老朽化のピークを迎えています。
これにより、橋や道路、配管などの維持や修繕にかかるコストが年々増加中です。

道路
国土交通省は、壊れてから直すのではなく、壊れる前に予測・修繕する「予防保全」の考え方を広め、予算の効率的な活用を目指しています。
こうした予防保全の推進には、AIとビッグデータの活用が不可欠です。センサーで得たデータや過去の点検記録をもとに、AIが設備の劣化や破損リスクを予測することで、点検や修繕のタイミングを最適化することができます。
実際に、AIによる予測モデルを活用して維持管理を進める自治体や企業も増えており、今後の主流になることが期待されています。
【事例紹介】AIで進化するインフラ点検

電線
アラヤでは、インフラ点検業務に特化したAIソリューションの開発・導入を行っています。ここでは、実際に企業様と連携して取り組んだAI活用事例をご紹介します。
プラント配管の劣化診断:AIで熟練者の目を再現
あるプラント運営企業(A社)では、検査員の人手不足や、スキル差による検査品質のバラつきの課題を抱えていました。
特に、配管パイプの外面検査では、カメラで撮影した画像や動画を使って、重点的に調べる箇所を判断する必要があり、検査員の大きな負担がありました。
そこでアラヤは、画像データから劣化状態を自動で分類・判定するAIを開発しました。
このAIにより、熟練者レベルの診断品質を再現しながら、業務の標準化と負荷軽減を実現。
さらに、現場でのAI精度向上を目指し、追加学習(継続的な精度向上)機能も搭載しました。
また、クライアントが使用しているアプリとシームレスに連携できるように設計することで、業務全体の効率化にもつなげています。

鉄塔の劣化診断:AIで時間と手間を大幅削減
送電インフラの一つである鉄塔は、多くが50年以上前に建設されており、今後20年で老朽化する設備が急増すると予想されています。
B社では、こうした鉄塔の点検業務をより効率的に行う方法を探していました。
ヒアリングの結果、以下のような時間と手間のかかる作業をAIで自動化できることがわかりました。
1.鉄塔の動画確認作業
2.欠陥箇所の面積測定
3.劣化状態の判定
アラヤは、動画を1フレーム単位で分析するAIを開発。欠陥の検出、面積の計測、そして劣化ランクの自動判定までを実現しました。
さらに、AIが動画の移動量を推定して、欠陥の位置を特定する機能も搭載。
これにより、検査対象箇所の特定にかかる作業が不要になり、報告書作成の負担も大幅に軽減されました。

インフラ点検でAIを導入するメリットとは?

鉄塔点検
近年、インフラ業界では人手不足や老朽化の加速を背景に、AIの導入が本格的に進んでいます。
特に点検業務の分野では、画像認識やデータ解析を活用したAIによって、これまで人が行っていた作業を自動化し、業務全体の効率を高める取り組みが広がっています。
では、インフラ点検にAIを導入することで、どんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、主な4つのメリットをご紹介します。
1.点検業務の効率化・自動化
AIは、カメラやセンサーから取得した画像・映像を分析し、劣化や異常を自動で検出することができます。
これにより、手作業での確認や報告作業の時間を大幅に削減。
検査員の負担を軽減しながら、スピーディーに点検を進めることが可能になります。
2.点検品質の安定化・標準化
従来の点検では、技術者の経験や判断力に依存していたため、検査水準にバラつきが出ることもありました。
AIを導入することで、どの現場でも一定の基準に基づいた判定が可能になり、点検の品質が安定し、属人化の解消にもつながります。
3.安全性の向上
高所作業や危険な場所の点検では、作業員のリスクが避けられません。
AIによるドローン撮影やリモート監視を活用すれば、人が直接危険エリアに立ち入らずに状態を確認できるため、安全性の高い点検体制の構築が可能になります。
4.データ活用による予測保全
AIは、点検データを蓄積し続けることで、「どの設備がいつ劣化するか」などを予測するモデルとしても活用できます。
これにより、壊れてから直すのではなく、壊れる前に修繕する「予防保全」が実現でき、修繕コストの最適化にもつながります。
詳しくは国土交通省がまとめた「予防保全の促進に向けた取組」をご覧ください。
アラヤ開発のAIをインフラ点検で導入するメリット
インフラ点検業務においてAIを導入する際、単に「技術がある」だけでは現場での運用は難しいものです。
アラヤは、実際の点検現場やお客様の課題に深く寄り添ったAI導入支援を強みとし、確かな技術力と現実的な提案力で業界をサポートしています。
ここからは、アラヤならではの強みを4つの視点からご紹介します。
1.お客様の課題に寄り添ったAI導入の提案力
AIを現場で“使える技術”にするためには、お客様ごとの点検工程や現場の課題を正確に理解することが不可欠です。
アラヤでは、導入前に丁寧なヒアリングを行い、課題の本質を捉えたうえで最適なAI導入方法を提案しています。
単なるパッケージ提供ではなく、現場ニーズに即した提案型支援が可能です。
2.精度を左右するデータ取得方法の支援
AIが高い精度で異常検知や劣化診断を行うには、「どんなデータを」「どう取得するか」が非常に重要です。
アラヤでは、AIチューニングを行う技術者の視点から、最適なデータ取得方法を提案しています。
無駄のないデータ収集を実現することで、モデルの学習効率と精度を大幅に向上させるサポートを行っています。
3.高度な研究開発に裏打ちされた技術力
アラヤは、AI開発の研究開発分野においても多数の実績を持ち、画像認識・機械学習・異常検知などを組み合わせたアルゴリズム設計の実力に定評をいただいています。
お客様ごとに異なる点検プロセスに応じて、最適なAIモデルを構築・カスタマイズできる柔軟性と開発力を兼ね備えたAI開発を行っています。
4.インフラ業界特有の課題にAIで対応
インフラ点検分野では、点検員の不足、属人化したスキル、維持費の高騰など、様々な課題が存在します。
アラヤのAIは、これらの課題に対して、点検業務の効率化、スキルの標準化、予防保全へのシフトを可能にするソリューションを提供します。
ただし、AI活用が効果を発揮するかどうかは、企業ごとの課題やプロセス、目的によって異なるため、まずは経験豊富な専門家に相談することが重要です。
詳しいサービス内容については、アラヤ公式サイトをご覧ください。
インフラ点検でAIを導入する際の注意点

点検現場
インフラ点検におけるAI導入は、作業の効率化や品質の安定化に大きなメリットがありますが、導入すればすぐに成果が出るわけではありません。
特に点検業務の特性上、現場ごとのプロセスや課題に合わせた設計・調整が必要です。
ここでは、AIを導入する際に押さえておくべき4つの重要なポイントをご紹介します。
1.課題の明確化が成功の第一歩
「なんとなくAIを導入すれば業務が楽になるはず」といった漠然とした導入は、かえって非効率になることがあります。
まずは、どの作業を効率化したいのか?どんな問題を解決したいのか?といった明確な課題設定が不可欠です。
アラヤでは、ヒアリングを通じて現場の課題を具体化し、目的に合ったAI活用方法を提案しています。
ぜひ一度無料相談・無料診断を活用してみてください。
2.データの質と量がAIの精度を左右する
インフラ点検AIの多くは、画像や動画データに基づく解析モデルです。
そのため、学習に使うデータの質や取得方法が、AIの判定精度に直結します。
●正確なラベリングがされているか
●異常データは十分に含まれているか
●撮影条件が統一されているか
上記のようなデータ整備には時間と工数がかかるため、AI導入前に十分な準備が必要です。
3.点検プロセスとの整合性が重要
AIを活用しても、現場の点検フローと噛み合っていなければ、逆に作業が煩雑になるリスクもあります。
●報告書作成との連携ができていない
●出力形式が現場で使いにくい
●判定結果の確認に手間がかかる
といった課題が起きないよう、点検業務全体との整合性を考慮して設計することが重要です。
4.導入後の継続的な改善体制が必要
AIは導入して終わりではありません。運用開始後に出てくる新たな課題や例外パターンへの対応も必要です。
●追加学習による精度改善
●使用データの見直し
●環境変化への対応
こうした対応を継続的に行える体制を整えることが、AI活用成功のカギとなります。
よくある質問
Q1:インフラ点検に特化したAI点検システムとはどのようなものですか?
A:インフラ点検向けAI点検システムとは、道路・橋梁・配管などの構造物を対象に、画像や動画を解析して異常を自動検出・分類するAI技術を活用した仕組みです。
アラヤでは、点検対象や運用方法に合わせてカスタマイズしたAIシステムをご提案しています。
Q2:AIによる異常検知はどれくらいの精度がありますか?
A:学習用のデータの質や量、使用するAIアルゴリズムにより異なりますが、アラヤでは現場の熟練者の判断基準を再現できるレベルまで精度を高めたAI異常検知モデルを構築しています。
追加学習により、導入後の精度向上も可能です。
Q3:インフラメンテナンスAIを導入する際の初期費用はどのくらいですか?
A:導入費用は、対象インフラの種類・点検工程の複雑さ・必要な機能によって変動します。
アラヤでは、スモールスタートから段階的に拡張可能なプランもご用意しており、無料相談時にお見積りをご案内いたします。
Q4:自社の点検運用フローにAIを組み込むことは可能ですか?
A:はい。アラヤのAIは、既存の点検プロセスや使用中のアプリ・報告書フォーマットとの連携が可能です。
現場で無理なく使えるよう、ヒアリングを通じて運用フローに沿った形でご提案・カスタマイズします。
Q5:AIアルゴリズムの選定や設計はどのように行われますか?
A:アラヤでは、点検対象や業務内容に応じて最適なAIアルゴリズム(画像分類、異常検知、劣化予測など)を選定・組み合わせて開発します。
研究開発で培った実績をもとに、現場で使えるアルゴリズム設計を行います。

金井 良太
【経歴】
2000年 京都大学理学部卒業
2005年 オランダ・ユトレヒト大学で人間の視覚情報処理メカニズムの研究でPhD取得(Cum Laude)米国カルフォルニア工科大学、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンにて研究員JSTさきがけ研究員、英国サセックス大学准教授(認知神経科学)
2013年 株式会社アラヤを創業
2020年〜内閣府ムーンショット事業プロジェクトマネージャーとしてブレイン・マシン・インターフェースの実用化に取り組む
【受賞歴】
文部科学大臣表彰若手科学者賞
ET/IoT Technology Award(2019)、JEITA ベンチャー賞(2020)など多数受賞