研究データのバックアップが必要な理由とは?具体的な4つの方法を解説

コラム 2026.08.26

実験や解析で積み重ねたデータをPCや外付けHDDに保存しているものの、「今の管理方法で十分だろうか」「バックアップは何をすればよいか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。PCの故障や誤操作は突然起こるため、いざというときに研究を止めない備えが必要です。

研究データのバックアップを適切におこなうことで、データを安全に管理できます。大がかりな作業を一度にする必要はなく、自分の研究環境に合った保存方法を選ぶことで実現可能です。

本記事では、研究データのバックアップが必要な理由を説明した上で、4つの具体的な方法を解説します。

研究データのバックアップが必要な理由

バックアップとは、研究データのコピーを元データとは別の場所に保管し、万が一のときに復元できる状態にしておくことです。

ここでは、バックアップが研究活動に欠かせない3つの理由を整理します。

理由1:データを失うリスクに備えるため

研究データは、日常的な作業のなかでも失われる可能性があります。誤って削除・上書きする、PCや外付けHDDが故障する、ノートPCやUSBメモリを紛失するといったリスクがあるためです。

研究データの多くはデジタルファイルです。デジタルファイルは管理が便利な一方、消えたデータを必ず取り戻せるとは限りません。

例えば、実験後に解析ファイルを上書きし、元の結果が必要になった場合を考えてみましょう。コピーが別の場所にあれば、そこから必要な時点のデータを取り出せますが、PC本体にしか保存していなければ、復元できない可能性があります。

研究データの消失は、研究の進展や成果の検証に大きく影響します。バックアップは「念のため」ではなく、研究を継続するための基本的な対策と考えることが重要です。

理由2:データ消失後の再取得・再作成には時間がかかるため

研究データを失っても、すぐに作り直せるとは限りません。実験、観測、試料の準備、解析などを改めて実施する必要があるためです。

また、長期間の観測データや、限られた試料から取得したデータは、同じ条件で再取得できない場合があります。再実験が可能な場合でも、時間・費用・人員を追加で要するでしょう。

特に、論文執筆や学会発表の準備中にデータを失うと、研究計画や締切に大きく影響します。バックアップを用意しておけば、データ消失による研究の中断や手戻りを最小限に抑えられます

理由3:ソフトによっては修正前の原稿に戻せないため

論文原稿、文献管理ファイル、解析データは、研究活動のなかで日々更新されます。しかし、誤って上書き保存した場合に、以前の状態へ戻せないソフトウェアもあります。

また、自動保存や変更履歴の機能があるツールでも、保存期間や対象範囲には違いがあるため、注意が必要です。ローカル保存を前提とするソフトウェアや、履歴機能のないツールでは、利用者自身が過去の状態を残す必要があります。

対策として、原稿や解析スクリプトを更新する前に日付や版番号を付けて保存し、別の保存先にもコピーしておくと安心です。大きな修正の前後など、作業の区切りでバックアップを取る習慣や仕組みを作りましょう。

研究データの主なバックアップ方法4選

研究データのバックアップをする上で重要な考え方は、1か所にだけ保管しないことです。

目安として、3-2-1ルールを参考にするとよいでしょう。3-2-1ルールは、2005年にアメリカの写真家ピーター・クローグ氏によって提唱されました。これは、データを3つ保有し、2種類の保存媒体に分け、そのうち1つは元データと離れた場所に保管する考え方です。

研究データでは、次のように考えると運用しやすくなります。

  • original(オリジナル):普段作業するPC上の元データ
  • near(ニア):外付けSSD・HDDや研究室内のファイルサーバーなど、元データと別の場所に置くコピー
  • far(ファー):original・nearから物理的に遠く、災害の影響が異なる場所に置くコピー

ここでは、主な4つのバックアップ方法を解説します。

研究データのバックアップ方法1:専用のバックアップツールを使う

研究データを管理する手間を抑えながら安全に保存したい場合は、バックアップソフトウェアなどを利用する方法が向いています。手動に頼らず、定期的にバックアップを取得できるためです。

研究データ管理の資料でも、手動ではなくバックアップソフトウェアなどを利用して定期的に取得する方法が推奨されています。

ディスク容量やバックアップに必要な時間を考慮し、フルバックアップ、増分・差分バックアップから適切な方法を選択した上で、ファイルの更新頻度などに応じて適切なバックアップ頻度(例:日次は差分バックアップ、月次はフルバックアップなど)を設定しましょう。

また、バックアップの設定をおこなうだけでなく、定期的にバックアップが実行されているかを確認することが重要です。さらに、万が一の際にバックアップからリストア(復元)できる状態かどうかも必ず確認してください。

参考:九州大学学術情報リポジトリ「はじめよう、研究データ管理」

研究データのバックアップ方法2:クラウドストレージに保管する

クラウドストレージは、研究データのコピーをPCから離れた場所に保管する方法です。OneDriveやDropboxなどを使えば、インターネット環境がある場所からアクセスできます。

PCが故障した場合や、研究室のPC・外付けHDDに同時に問題が起きた場合にも、クラウド上のコピーがあれば復元できる可能性があります。PCと外付けストレージだけでなく、遠隔地にもコピーを置く役割を担える点が利点です。

ただし、利用できるサービスや保存可能なデータの種類は、所属機関の情報セキュリティポリシーで定められていることがあります。個人情報や共同研究の未公開データ、知的財産に関わるデータは、個人契約のサービスへ保存する前に、研究室や所属機関のルールを確認してください。

重要なデータでは、アクセス権限を必要なメンバーに限定し、二段階認証などの設定も検討しましょう。クラウドを使う場合も、誤削除やアカウントトラブルで利用できなくなることがあるため、別の保存先にもコピーを残しておきましょう。

研究データのバックアップ方法3:オンライン上で編集可能なツールを使う

研究データのバックアップ方法として、GoogleドキュメントやMicrosoft 365など、オンライン上で編集できる文書や表計算ツールを活用する方法もあります。ファイルがクラウド上で管理され、編集内容が自動保存される点が特徴です。

ローカルPCだけに保存する場合と比べ、PC本体の故障による消失リスクを減らせます。変更履歴を確認できるツールであれば、誤った編集をしてしまったときに、以前の状態を確認しやすい点も利点です。また、共同研究者と同じ原稿を編集・コメントしたい場合にも役立ちます。

一方、オンライン向けの編集ツールでは、利用できる機能や保存期間、アクセス権限はサービスの設定に左右されます。共有設定を誤ると関係者以外が閲覧できてしまうリスクもあるため、オンラインツールだけに依存せず、別途バックアップを取得しましょう。

研究データのバックアップ方法4:手作業でコピーして保管する

研究データのバックアップをすぐに始めたい場合は、USBメモリや外付けSSD・HDDへ手作業でコピーする方法があります。専用のソフトウェアを導入しなくても、必要なフォルダを別の保存先へコピーするだけで始められます

例えば、毎週金曜日に

  • 実験データ
  • 解析データ
  • 論文原稿

のフォルダを外付けSSDへコピーする、といったルールを決める方法です。元データと別の保存先に複製を置くことで、PCの故障や誤削除に備えられます。

ただし、外部記憶媒体にも故障、紛失、盗難のリスクがあります。USBメモリや外付けSSD・HDDは、必要に応じて暗号化し、施錠できる場所に保管しましょう。コピー後にはファイル数や更新日時を確認し、定期的に更新することも欠かせません。

具体例:EndNoteでは文献ライブラリのバックアップを作成できる

研究現場で広く利用されている文献管理ツールの一つであるEndNoteでは、文献ライブラリのバックアップを作成できます。これは研究データ全般ではなく、EndNoteで管理している文献情報や添付ファイルを含むライブラリのバックアップ機能です。

ライブラリデータをコピーしてUSBメモリなどの外部ストレージへ保存する方法に加え、EndNoteでは「Compressed Library(.enlx)」による圧縮保存を利用できます。ライブラリの容量が4GB以下の場合は圧縮保存を作成でき、4GBを超える場合はライブラリデータをコピーして保存します。

PCの故障に備えるには、作成したバックアップをPC本体以外のUSBメモリや外付けストレージなどにも保存しましょう。また、ライブラリを移動する場合は、必要なファイルとフォルダの組み合わせを崩さないことも重要です。

研究データは「守る」だけでなく「活用できる状態」で保存することが重要

バックアップは、研究データの消失を防ぐための重要な取り組みです。しかし、バックアップをただ残しておくだけでは、必要なときに活用できるとは限りません

そこで、後から自分や共同研究者が利活用できるように、次の情報を揃えておくことが重要です。

  • フォルダ構成
  • ファイル名
  • 保存場所

例えば、ファイル名に取得日・実験条件・版番号を入れ、raw(生データ)、processed(処理後データ)、result(解析結果)などでフォルダを分けると、データを探しやすくなります。

また、どの条件で取得したデータか、どの解析に使ったかといった情報も、READMEや実験ノートに残しましょう。適切なデータ管理は、研究の再現性を高め、共同研究や引き継ぎの円滑化につながります。

保存場所や命名ルールを含めた研究データの管理方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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まとめ|研究データのバックアップで研究の手戻りを防ごう

  • 研究データは誤削除・機器故障・紛失などで失われるおそれがあるため、バックアップが欠かせない
  • 適切なバックアップを取る上で、単一の場所だけでなく複数の場所へ保存する必要がある
  • 自動バックアップやクラウド、オンライン編集ツール、手作業のコピーなどから、研究室のルールとデータの性質に合う方法を選ぶことが重要

研究データを適切にバックアップしておくことで、万が一データが失われても、研究への影響を抑えながら復元できます。

まずは、現在の研究データがどこに保存されているかを確認してください。その上で、外付けストレージへの定期コピーやクラウドへの保存など、バックアップ方法を1つ実行してみましょう。

arayainc
執筆監修

株式会社アラヤ

先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。

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