VLMとは?初心者でもわかる視覚言語モデルの仕組みと活用例

活用事例 2025.02.20

最近、AI開発の現場で「VLM(視覚言語モデル)」という技術が注目されています。
これは、画像と言語を同時に理解できるAIの仕組みです。
従来のAIモデルに比べて、画像やテキストを一緒に扱えることで、現場の業務やビジネス活用の幅を大きく広げられます。

ここでは、VLMの基本的な仕組みや、どうして今注目されているのかをわかりやすくご紹介します。

VLMとは?導入現場に役立つ基本知識

Vision Language Model

Vision Language Model


VLM(Vision Language Model)は、画像や動画などの視覚情報と、テキストで書かれた言語情報をつなぐAI技術のことです。
これまでの画像認識技術(たとえばCNNなど)では、画像の中に「何があるのか」はわかっても、その背景や関係まで理解するのは難しいものでした。
一方、VLMは視覚と言語を一緒に理解することで、より深い意味や文脈までとらえられます。

VLMの活用例

たとえば製造業の現場では、機械の異常を示す画像と説明テキストを組み合わせて、原因や解決策を見つけやすくするために活用されています。
また、医療分野でも、診断画像と患者さんの説明を一緒に解析できるので、診断の精度を高める助けとしても使われています。

このように、VLMは「画像と言葉を一緒に理解できるAI」として、さまざまな現場で活用が広がっています。
そのほかの活用事例についてはこちらからご確認ください。

VLMとLLMの違い|導入時の選択ポイント

VLMとLLMの違い

VLMとLLMの違い


VLMと似たような性質を持つ技術に、LLM(大規模言語モデル)というものがあります。
ここでは、VLMとLLMの違いについてご紹介します。

LLM(大規模言語モデル)

LLM(大規模言語モデル)は、多くの文章を学ぶことで、言葉の意味や使い方を理解できるAI技術です。
たとえば、文章を作ったり、質問に答えたり、文章の内容をまとめたりするときに使用されます。
よくニュースなど広い意味で「AI」と呼ばれているのは、このLLMのことが多いです。

VLM(視覚言語モデル)

VLM(視覚言語モデル)は、画像や動画といった視覚情報を、言葉の情報と一緒に理解できるAI技術です。
たとえば、画像を見ながら説明をまとめたり、画像とテキストの情報を組み合わせて問題を解決することができます。

このように、VLMは画像と言語を結びつけることで、LLMよりも幅広いタスクに対応できるのが特徴です。

VLMの仕組み・構造

VLM(視覚言語モデル)は、画像や動画などの視覚情報と、言葉の情報を一緒に理解できるAIの技術です。
その仕組みは、大きく分けて3つのタイプに分かれています。
● 視覚とテキストの関係性を理解するモデル
● 画像やテキストなど複数の情報(マルチモダリティ)を入力し、文章(テキスト)を出力するモデル
● 複数の情報を入力し、さらに複数の情報を出力するモデル
このように、VLMは「視覚と言語をつなぐ仕組み」を持つことで、画像だけでなく文章とも組み合わせて活用できるのが特徴です。

VLMの仕組み:視覚と言語の情報をどう結びつけている?

今回の例では、視覚とテキストの関係性を理解するモデルをご紹介します。
図3では、画像と単語のリストを入力し、画像にもっとも合う単語を選び出す仕組みです。

たとえば、お寿司の画像と一緒に「sushi」「sashimi」「gyoza」などの単語を入力します。
モデルは、画像と単語のペアを比べて、どの単語が一番近いかを判断し、「sushi」という答えを出します。

この仕組みにより、VLMは画像と単語の関係を学び、「画像に何が写っているのか」を言葉で説明する力を高めています。
こうした技術は、openai/CLIP(画像とテキストを結びつけるAIの技術)などで実現されており、現場でも画像とテキストの情報をまとめて活かすことができるようになっています。

これにより、画像やテキストの情報を別々に扱うのではなく、組み合わせて使うことで、より多角的な課題解決が可能になります。

VLMが解決できる課題

ここではVLMが解決できる3つの課題をご紹介します。

新しい単語でも再学習なしで対応できる

VLMは、新しい単語が出てきても再学習をする必要がなくなりました。
「ゼロショット学習」という仕組みがあり、学習済みの枠にとらわれず、新しい単語を追加するだけで画像を分類できるため実現されたものです。
これにより現場で新しい課題が出てきても、すぐに柔軟に対応できるようになりました。

画像とテキストを合わせた説明や質問応答ができる

VLMは、画像の情報とテキストを一緒に使って、自然な文章で説明したり質問に答えたりが可能です。
たとえば、風景の画像を入力すると、山や川、建物などの要素を言葉で説明できます。
また、「この天気は?」という質問に「晴れ」と答えることもできます。
こうした柔軟な理解は、現場での問題解決や作業の効率化に役立ちます。

音声や動画なども含めた複雑な情報に対応できる

最近では、画像や音声、ビデオなど複数の情報を同時に扱う、より進化したAIモデルも登場しています。
こうしたモデルでは、画像やテキストに加えて音声や動画の情報も活かし、豊かな文脈での理解や生成が可能です。

たとえば、「この景色に合う音楽を作ってください」というリクエストに音楽を作ったり、
「この景色をもとに短いビデオを作ってください」という指示にあわせて、ビデオクリップを生成することもできます。

VLMを導入するメリット・デメリット

VLMを導入するメリット

VLMを導入するメリット


現場で活用することで業務の効率化や新しい価値を生み出せる一方で、いくつか注意すべきデメリットもあります。
ここでは、VLMを導入する際に知っておきたいメリットとデメリットをまとめてご紹介します。

メリット

VLMを導入すると、業務に役立つさまざまなメリットがあります。
具体的には以下のような点が挙げられます。
● 画像とテキストの情報を同時に活用できるので、現場での柔軟な対応が可能
● 新しい単語やクラスが出てきても、再学習なしで対応できる(ゼロショット学習)
● 画像と言葉を組み合わせた説明や質問応答ができ、作業の精度やスピードが向上
● AI導入後も、さまざまな業界や業務に応用が広がる可能性がある

これらのメリットを活かすことで、VLMは現場の業務改善に役立つ技術として期待されています。

デメリット

一方で、VLMを導入する際には注意が必要なデメリットもあります。
具体的には以下のような点が考えられます。
● AIモデルの特性や仕組みを正しく理解しないと、使いこなすのが難しい
● 高性能なモデルは計算コストやシステム整備が必要になる場合がある
● 導入前に、データの整備や業務に合わせたカスタマイズが必要
● まだ新しい技術のため、運用面やデータ保護への配慮が求められる

これらの点に注意しながら、VLMを業務に活かしていくことが大切です。

VLMを導入する際の注意点

VLMの導入注意点

VLMの導入注意点


VLM(視覚言語モデル)を導入する際には、いくつかのポイントに気をつける必要があります。
ここでは、データ面・技術面・運用面など、それぞれの視点での注意点をご紹介します。

データの品質と準備

VLMの出力は、入力する画像やテキストの質により大きく変化します。
データに偏りがあると、出力結果も偏ってしまうリスクがあります。
そのため、正確で質の高いデータを準備することが重要です。

技術面での理解と体制

VLMは高度な仕組みを持つため、正しく理解し、業務に合わせて調整できる知識や体制が必要です。
社内に専門的な技術者がいない場合は、外部の専門家やパートナーの支援を活用するのも良い方法です。

技術面でのサポート体制を整えることが、スムーズな導入を実現するカギになります。

運用・セキュリティの配慮

VLMは入力に応じて様々な出力を生成できますが、その中には矛盾や攻撃的な内容、不適切な表現が含まれる可能性があります。
また、データの取り扱いやプライバシー保護など、セキュリティ面の配慮も欠かせません。 そのため、運用面でのルール作りやトラブル時の対応をあらかじめ考えておくことが大切です。
導入後も、生成した出力を必ず人の目でチェックする、不適切な内容が出力されると重大なリスクに繋がるような活用は避けるなど運用状況を見ながら改善や最適化を続ける姿勢が求められます。

VLMを導入する際の流れ

VLMを導入する流れは、以下のようなステップで進めるのがおすすめです。
1. 目的を明確にする
どのような業務課題を解決したいのか、目的をしっかり決めることが重要です。
2. 必要なデータの準備
VLMは画像やテキストを組み合わせた仕組みなので、必要なデータを整理し、準備します。

3. VLMの学習やカスタマイズ
必要に応じて、自社の業務に合うように学習モデルをカスタマイズします。

4. テストと評価
導入前にテストを行い、現場で使いやすいか、業務に合っているかを確認します。
5. 本格導入と運用
テスト結果をふまえて本格導入し、現場で活用をスタートします。運用後も必要に応じて調整を行い、改善していきます。

このように段階的に進めることで、VLMを無理なく現場に取り入れ、業務改善につなげることができます。

開発ベンダーでサポートを受けながら挿入もおすすめ

VLMの導入にあたっては、開発ベンダー(VLMの実装や運用を専門に支援する外部のパートナー)からサポートを受けるのも良い方法です。
技術的な知見や導入のノウハウを活かして、無駄のないスムーズな運用につなげることができます。

アラヤはVLMにおいて開発から導入まで一貫サポート

他社比較表

他社比較表


VLM(視覚言語モデル)の導入を考えている現場の方に向けて、アラヤでは企画から開発、導入、運用までを一貫してサポートしています。
業界や現場ごとに異なる課題に合わせて、最適なVLMのカスタマイズや運用設計をお手伝いします。

AIの知識がない方でもお任せください

専門的な知識が必要なVLM導入ですが、アラヤは豊富な実績を持つプロフェッショナルとして、初めての方でも安心して任せられる体制を整えています。
AIの活用で業務効率化や新しい価値を実現したい方は、まずは無料相談から始めてみてください。

よくある質問

Q1:マルチモーダルAIとは何ですか?
A:マルチモーダルAIとは、画像や音声、テキストなど複数の種類の情報(モダリティ)を同時に理解できるAIのことです。
VLMはその一種で、視覚と言葉を組み合わせて活用できます。
国立研究開発法人産業技術総合研究所のマルチモーダルAIの説明はこちら。

Q2:ゼロショット分類ってどんな仕組みですか?
A:ゼロショット分類は、あらかじめ学習していない新しいカテゴリにも対応できる仕組みです。
VLMはこの能力を活かして、現場で柔軟な対応ができます。

Q3:トランスフォーマーアーキテクチャはVLMにどう使われているんですか?
A:トランスフォーマーアーキテクチャは、文章の意味や画像の特徴を捉えるのに優れた仕組みです。
VLMでは、視覚とテキストの情報をつなぐ役割として活用されています。

Q4:CLIPとはどう違うのですか?
A:CLIPは画像と言葉を結びつけるための技術のひとつです。
VLMはCLIPを含む仕組みを活かしながら、より幅広いタスクや業務への応用が可能になっています。

Q5:VLMの精度を評価するにはどうすればいいですか?
A:モデルの精度は、ベンチマーク(性能評価)データセットを使って比較することが多いです。
実際の現場データでのテストも、最終的な業務適用の判断に役立ちます。

まとめ

VLM(視覚言語モデル)は、画像とテキストを一緒に理解することで、業務の効率化や新しい価値を作るのに役立つ技術です。
ただし、導入にはデータや技術面での準備・理解が大切です。

アラヤでは、VLMの企画から開発・運用まで一貫してサポートしています。
初めての方も、まずは無料相談で自社に合った導入方法を見つけてみてください。

執筆監修
代表取締役

金井 良太

【経歴】
2000年 京都大学理学部卒業
2005年 オランダ・ユトレヒト大学で人間の視覚情報処理メカニズムの研究でPhD取得(Cum Laude)米国カルフォルニア工科大学、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンにて研究員JSTさきがけ研究員、英国サセックス大学准教授(認知神経科学)
2013年 株式会社アラヤを創業
2020年〜内閣府ムーンショット事業プロジェクトマネージャーとしてブレイン・マシン・インターフェースの実用化に取り組む
【受賞歴】
文部科学大臣表彰若手科学者賞
ET/IoT Technology Award(2019)、JEITA ベンチャー賞(2020)など多数受賞