2021.08.06 お知らせ

河川水位をAIで高精度に計測する技術を開発

人工知能(AI)の技術開発・ソリューション提供を手掛ける株式会社アラヤ(所在地:東京都港区、代表取締役:金井 良太、以下 アラヤ)は、2021年1月より栃木市において実施した防災分野における実証実験(以下「本実証実験」)に参加し技術協力いたしました。その中でアラヤは、4Kカメラを用いた河川の監視カメラ画像から、河川の水位を推定するAI(人工知能)のモデル構築をし、±3.6cmの誤差での水位の推定を実現しました。

本実証実験は、2020年9月18日に総務省の「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る防災分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(防災業務の高度化及び迅速な住民避難行動の実現)」事業に選定され、株式会社地域ワイヤレスジャパンとケーブルテレビ株式会社が主体となり実施したものです。

■災害防止のための地方自治体の情報収集・分析をAIで支援する
日本は自然的条件から水害等の自然災害が発生しやすい特性を有しています。例えば台風やゲリラ豪雨等による河川越水や道路冠水など、甚大な被害が毎年発生しています。
一方で災害時において地方自治体では、限られた職員が様々な情報を収集・分析した上で迅速かつ的確に避難誘導等の判断をしなくてはならないため、職員の負荷が高いという課題があります。このようなことから近年、災害発生時における被害状況の把握、河川監視等にAI活用の重要性が高まっています。
今回アラヤでは、AIにより高精度な水位の推定を実現し、これにより、地方自治体の防災業務の効率化に貢献いたします。

■河川の画像から水面をピクセル単位で認識。不足データをCGで増強し高精度な予測を実現

意味的領域分割モデル(セマンティックセグメンテーション)という、ピクセル単位で何が写っているかを分類する深層ニューラルネットワークの技術を利用します。河川を写した画像内から「水面」が写る領域を認識し、その水面状態の時に水位がいくつかを推定します。

一般的に、高精度なAIを構築するためには、様々な水位の画像が必要になります。一方で、本実証実験の短いデータ取得期間では天候変動が乏しく、水位のバリエーションが少ないという課題がありました。そのため、実写画像をベースにし様々な水位の状態を再現したCG画像を制作しデータを増強することで、高精度なAIモデル構築を実現しました。またこれにより、他の地点や他の河川にも適用しやすくなります(汎化性の向上)。

■3地点で実験を実施し、最良の地点では±3.6cmの誤差で水位を予測
3つの地点で実証実験を実施し、2地点でそれぞれ、±3.6cm、±3.74cmの誤差で水位の推定に成功しました。また、残りの1地点については±15.32cmの誤差であり、精度低下の要因を特定(夜間における光量不足)し、課題解決手法に関する示唆を得ることができました。

《参考》
総務省による報道資料「『課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証』に係る令和2年度成果及び令和3年度実施方針の公表」
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000291.html

プレスリリース (PDF)