2022.10.14 お知らせ

ブレイン・テック ガイドブックを公開 ~ブレイン・テックを正しく理解して安全に使える社会へ~

内閣府が主導するムーンショット型研究開発事業のムーンショット目標1の研究開発プロジェクトである「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」(プロジェクトマネージャー:金井良太、代表機関:株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、以下、ムーンショット金井プロジェクト)では、このたび脳科学の知見とテクノロジーの融合を活用した技術であるブレイン・テック(ニューロテクノロジー)に関する「ブレイン・テック ガイドブック ver1.0」を公開しました。本ガイドブックには、一般消費者が市販のブレイン・テック製品を正しく理解するために注意すべき事項や、事業者が研究開発を行う際に参考となる情報など、技術の現状と課題がまとめられています。本書を通じて、社会でのブレイン・テックに対する適正な理解が進むことが期待されます。

プロジェクトマネージャーのコメント
ムーンショット金井プロジェクトのポリシーとして、「Trusted BMI」を実現し、一般の皆さまが安心して利用できる世界をつくり出すことが重要と考えております。本ガイドブック作成の取り組みによってブレイン・テックに対する正しい理解が促進されることで、BMI技術に対する信頼獲得や技術普及への基盤構築につながることが期待されます。また、今回のような本活動の成果は、今後も日本から世界に向けて積極的に発信していくことが大切と考えております。

<背景>
脳科学の知見とテクノロジーの融合を活用した「ブレイン・テック(ニューロテクノロジー)」の市場規模は、今後、世界的に拡大することが見込まれています。特に、消費者が直接購入可能なDTC(Direct to Consumer)製品の市場は、欧米を中心に急拡大しています。それら製品のパンフレットを見てみると、「集中力の向上」「睡眠状態の改善」「運動パフォーマンスの向上」といった、魅力的な謳い文句が並んでいます。しかし、これらの効果には科学的な根拠があるのでしょうか?一般消費者が自分でブレイン・テック製品を扱うことに、危険性はないのでしょうか?

ムーンショット金井プロジェクトでは、これらの疑問に答えるため、現状で明らかとなっている正しい知識や考え方、ブレイン・テックとの向き合い方を示した「ガイドブック」を作成しましたので、このたび公開いたします。並行して作成している、システマティック・レビューの結果に基づいて、ブレイン・テックの有効性と安全性をまとめた「エビデンスブック」については、完成次第、順次公開しますのでお待ちください。なお、ガイドブックの内容は、今後の科学的根拠の蓄積や安心安全に利用するための基準づくりを経て、増補・改訂を予定しております。

<ブレイン・テック ガイドブック ver1.0の内容>
本ガイドブックでは、「ブレイン・テックとは何ですか?」「ニューロフィードバックとは何ですか?」「ニューロモジュレーションとは何ですか?」「市販の製品のどこに注意すべきですか?」「どのような点に注意して製品の開発を進めるべきでしょうか?」といったテーマに対して、科学的な根拠と作成委員会の見解、さらには、外部評価委員、関連学会、行政の担当者の意見を基にした回答がまとめられています。また、パブリックコメントの募集によっていただいたご意見も参考に、本書の内容を推敲しました。

他にも、「医療機器の定義と一般消費者向けブレイン・テック製品の扱い」、「ブレイン・テックの使用にともなうリスクや倫理的な課題」、「ブレイン・テックに関する最新情報の入手方法」といった参考情報がまとめられています。なお、本書では、医療/研究用のブレイン・テック製品については、対象としておりませんのでご注意ください。

➡ブレイン・テック ガイドブックはこちらより閲覧できます
➡「ブレイン・テック ガイドブック(案)」に対するパブリックコメントでいただいたご意見と委員会の回答はこちら

<今後の展望>
一般消費者向けブレイン・テックは、発展途上の技術であることから、さらなる科学的な根拠が蓄積され、基準や法律が整備されることで、安全・安心に利用できる体制が整えられることが望まれます。本書は、それらの実現に向けた最初のきっかけとなるよう、現在の知見から言えること、まだわからないこと、今後の発展に必要なことを整理してまとめました。作成委員会では、本ガイドブックの公開を機に、さらに活動の幅を広げ、産官学民が一体となれる体制づくりの構築に努めて参ります。

■ブレイン・テック ガイドブック作成委員会
金井良太(代表、株式会社アラヤ)、牛場潤一(慶應義塾大学)、武見充晃(慶應義塾大学)、栁澤琢史(大阪大学)、茨木拓也(NTTデータ経営研究所)
➡「ブレイン・テック ガイドブック」作成におけるCOI(利益相反)自己申告に関する開示はこちら

■ブレイン・テック ガイドブック作成に関連する研究開発課題
課題4-1-1「プロジェクト共通課題の検討と社会実装に向けた研究開発」(課題推進者:金井 良太)
課題4-1-2「Trusted BMIを実現する社会基盤整備」(課題推進者:武見 充晃)

■ムーンショット型研究開発事業について
内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」は、超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進するものです。
➡国立研究開発法人科学技術振興機構の本プロジェクトに関する情報はこちら

■研究開発プロジェクト「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」の概要
人の意図が推定できれば、思い通りに操作できる究極のサイバネティック・アバター(CA)注1)が可能になります。推定には脳活動の内部だけでなく脳表面情報や他人とのインタラクション情報も重要な手がかりになります。これらをAI技術で統合し、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)注2)機能を持つCA(BMI-CA)を倫理的課題に考慮して開発します。2050年には、人の思い通りに操作できる究極のBMI-CAを実現します。
➡本プロジェクトのウェブサイトはこちら

<用語解説>
注1)サイバネティック・アバター(Cybernetic Avatar:登録商標第6523764号)
遠隔操作できるロボットやサイバー空間上でのキャラクターのように、自分と感覚を共有し社会活動を行うアバターのことを指します。

注2)ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)
脳情報を利用することで、脳(ブレイン)と機械(マシン)を直接つなぐ技術(インターフェース)の総称です。

<本件に関するお問い合わせ先>
■報道全般、ATR全般に関するお問い合わせ
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
経営統括部 企画・広報チーム
TEL:0774-95-1176
FAX:0774-95-1178
Email:pr@atr.jp

■研究開発プロジェクトに関するお問い合わせ
金井 良太
株式会社アラヤ 代表取締役
E-mail:pmo@brains.link

プレスリリース(PDF版)