画像認識AIの注目技術!YOLOとは?特徴と活用事例を解説

コラム 2025.09.18

たった1枚の画像から「何が」「どこに」「いくつ」あるのかを一瞬で見分けるAIがあるとしたら、業務の効率が上がると思いませんか。

最新の画像認識AIを使えば、物体検知が瞬時に行えます。画像認識AIには複数の手法がありますが、中でも注目されているのが「YOLO」です。YOLOはリアルタイム処理に優れ、現場への導入が進んでいます。

この記事ではYOLOの概要、仕組みや他の技術との違いをご紹介します。活用事例や導入までの流れも解説するため、「名前を聞いたことがある」段階から導入を検討できるレベルまで深められます。

画像認識AIの仕組みからYOLOを解説|他の手法との比較も

画像認識AIの仕組みからYOLOを解説|他の手法との比較も
画像認識AIの仕組みを知ると、YOLOが注目される理由がより明確になります。YOLO以外にも画像認識技術はあるため、導入前に比較できるような知識を身につけましょう。

画像認識AIとは

画像認識とは、カメラの映像や画像データをもとに物体や人物などを判別する技術です。日常では、スマートフォンのロック解除や車の自動ブレーキなどで利用されています。

画像認識とAIを組み合わせると、判別結果をAIが学習データと照合し、状況判断やパターン認識まで行えます。画像認識AIを使用すると、人の代わりに予測・判断できるようになるため、ヒューマンエラーや人手不足といった現場の悩み解消に役立ちます。

「YOLO」とは画像処理を高速・リアルタイムに行うアルゴリズム

画像認識AIは多様な仕組みで構成されていますが、その中でも実用性が高く注目されているのがYOLO(You Only Look Once)です。
YOLOはリアルタイムでの物体検出を可能にするアルゴリズムで、製造ラインの監視や人物・物体検出など、カメラ映像のリアルタイム処理に活用されています。その一例として、歩行者交通量の調査手法に活用された研究報告もあります。

参考:土木学会論文集F3(土木情報学)「頭部に着目した歩行者交通量調査に関する研究」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejcei/78/2/78_I_82/_article/-char/ja/

他の画像認識技術との違い

従来の画像分類は、入力画像全体を1つのカテゴリに分類する仕組みであり、処理に時間がかかっていました。
たとえば犬と猫の分類モデルなら、1枚の画像を入力すると「犬」か「猫」のいずれか1つしか出力できません。もし犬と猫が同時に写っている場合は、領域を切り出して繰り返し判定しなければならず、その分処理が重くなってしまいます。

一方、YOLOは画像を分割し、複数の物体の位置と種類を同時に出力します。先ほどの犬と猫の例であれば、1枚の画像の中に「犬」と「猫」が同時に写っていても、それぞれの位置と種類を一度で検出できます。従来の画像分類に比べ処理速度が速く、次のような場面で活用されています。

  • 異常の検知やセキュリティ
  • 機械や車の自動運転

ただし、場合によっては従来手法に精度が劣る可能性もあります。用途を明確にし、自社の課題を解決できる画像認識AIを導入することが大切です。

画像認識AIで何が変わる?YOLOの活用事例を3つ紹介


画像認識が瞬時にできるYOLOは、どのような場面で使われているのでしょうか。自社の課題解決に活かせるかどうかを判断できるよう、活用事例を紹介します。

製造業:品質と生産性の向上

製造業の現場では、「人手不足」と「高い品質基準」の両立が大きな課題です。AI画像認識は、熟練の職人の「目」を代替・サポートする技術として導入が進んでいます。

業界の課題

課題例1:検品作業の属人化と見逃し

製品の傷や汚れなどをチェックする外観検査は、熟練者の経験に頼りがちです。
しかし、集中力を保ち続けることは難しく、ヒューマンエラーによる不良品の見逃しが発生します。また、熟練者も不足しており深刻な状況です。

課題例2:生産性の限界

目視検査には時間がかかり、生産ライン全体のスピードを上げる際のボトルネックになっていました。

AI画像認識による解決策

解決策1:業界の課題:外観検査の自動化

AIを搭載したカメラが、製品の画像を瞬時に分析します。
人間では見逃してしまうような微細な傷や異物の混入も、AIは一定の基準で24時間365日、高速かつ正確に検出し続けます。これにより、品質の安定化と検査工程の無人化が可能になります。

解決策2:作業の自動化と効率化

産業用ロボットにAI画像認識を組み合わせることで、これまで人間が行っていた部品のピッキングや仕分け作業を自動化できます。これにより、生産ライン全体のスピードアップと省人化を実現します。

小売・流通業:店舗運営の効率化と顧客体験の向上

小売業界では、深刻な人手不足への対応と、オンラインストアに対抗するための新しい店舗体験の創出が急務となっています。

業界の課題

課題例1:慢性的な人手不足

レジ打ち、品出し、在庫管理など、店舗運営には多くの人手が必要ですが、労働人口の減少により人材確保が困難になっています。

課題例2:販売機会の損失

商品の品切れに気づかず、顧客が買いたい時に商品がない「機会損失」や、万引きによる損失が発生していました。

AI画像認識による解決策

解決策1:レジの無人化・省人化

商品を置くだけでAIカメラが商品を瞬時に認識し、会計を自動で行う「無人レジ」システムを導入できます。これにより、レジ待ちの解消とスタッフの負担軽減を両立します。

解決策2:在庫管理と顧客分析

店内に設置したカメラが商品棚を常に監視し、商品が少なくなると自動でスタッフに通知します。
また、来店客の動線や、どの商品棚の前で立ち止まったかといった行動を分析し、より魅力的な売り場づくりやマーケティングに活用することができます。

農業分野:食糧の安定供給と持続可能性の実現

農業は、従事者の高齢化や人手不足、気候変動による影響といった大きな課題を抱えています。
AI画像認識は、経験と勘に頼っていた部分をデータで補い、効率的で持続可能な「スマート農業」を実現する鍵となっています。

業界の課題

課題例1:担い手不足と高齢化

熟練農家の減少により、これまで培われてきた知識や技術の継承が困難になっています。
加えて農作業は依然として人の力に大きく依存しています。

課題例2:経験と勘への依存

水やりや肥料、農薬のタイミングは、農家の経験と勘に頼ることが多く、必ずしも最適化されているとは限りませんでした。

課題例3:病害虫や雑草への対応

広大な農地の中から病害虫の発生箇所を早期に発見したり、雑草だけを除去したりするには多大な労力が必要でした。

AI画像認識による解決策

解決策1:生育状況のモニタリング

ドローンや人工衛星から撮影した農地の画像をAIが解析し、作物の生育状況を色や形で判断します。
これにより、成長の遅れているエリアを特定し、的確な追肥などを行うことが可能になります。

解決策2:病害虫の早期発見

AIが作物の葉の画像を分析し、病気の初期症状や害虫を自動で検出します。
早期発見により、農薬の使用を最小限に抑えながら被害の拡大を防ぎます。

解決策3:雑草の自動検出とピンポイント除草

AIを搭載したロボットが、農地を走行しながら作物と雑草を正確に見分け、雑草だけに除草剤を散布したり、物理的に除去したりします。これにより、農薬コストと環境負荷を大幅に削減できます。

画像認識で業務を効率化!YOLOのメリットとデメリット

画像認識で業務を効率化!YOLOのメリットとデメリット
YOLOは、画像認識によって業務効率化を支援する技術として注目されています。ここでは、導入を検討するうえで知っておきたいメリットと、あわせて理解しておくべきデメリットを紹介します。

リアルタイム処理が可能

YOLOは、以下の仕組みによってリアルタイム処理を可能にしています。

  • 画像入力後に画像のリサイズ作業を実施
  • 1回の画像処理で、位置・ラベル・信頼度を同時に予測
  • 画像を見て物体の位置を囲む枠(バウンディングボックス)と、それが何の物体か(人・犬・車など)を同時に予測

従来は数秒〜数十秒単位で行っていた判定を、数百ミリ秒単位で処理できるようになりました。「瞬時の判断」が求められる現場において、YOLOの高速処理は大きな強みといえます。

汎用性が高い

YOLOのメリットのひとつは、学習データを変えることでさまざまな対象物を検出できる汎用性の高さです。

たとえば、製品の外観検査に使用していたモデルを、異なる欠陥の検出に応用できます。これは、YOLOにあらかじめ大規模データで学習されたモデル(学習済みモデル)が公開されているためです。

そのため、ゼロから新しいAIを開発する必要はなく、既存モデルをベースに調整することで、効率的にAIシステムを導入でしょう。たとえば、欠陥検出モデルに数百枚の追加データを与えるだけで、新しい異常パターンにも適応可能です。
加えて製造業は部品・材料・製法が変わる可能性もあるため、柔軟に対応できるのはメリットといえます。

物体検出対象の制約がある

YOLOの高速処理を支えている仕組みのひとつに「畳み込み処理」があります。これは画像を小さな領域に分割し、それぞれから特徴を抽出する方法で、複雑な情報を効率的に扱えるのが利点です。

そのためYOLOは一度の処理で多くの情報をまとめて解析でき、リアルタイムでの検出を可能にしています。
しかしこの過程で画像が圧縮され、小さな物体は情報が失われやすいという弱点もあります。認識対象が小さい場合は、YOLOで認識・分析ができるのかどうかを確認しましょう。

YOLO導入ステップと活用の基本

YOLO導入ステップと活用の基本
YOLOの導入、活用のための基本的な考え方は以下の通りです。

  1. 環境構築を行う
  2. モデル学習と評価
  3. 推論テストと最適化
  4. 配備と運用

それぞれの詳しい方法を解説します。

ステップ1:環境構築を行う

YOLOを動かすには、他のソフトや設定と混ざらない専用の作業スペースをつくるのが一般的です。この専用スペースは、仮想環境(venvやcondaなど)と呼ばれ、ここにPythonやYOLO本体、必要なライブラリを入れて準備を整えます。

まずは、Pythonと仮想環境(venvやconda)を準備しましょう。Pythonは以下からダウンロードできます。
https://www.python.org/downloads/

その後、YOLO本体と必要なライブラリをインストールします。
次に、学習用・評価用・テスト用の画像データを用意し、必要に応じて対象物に枠とラベルを付ける「アノテーション作業」(例:傷や部品を囲んで名前を付ける)を行います。
最後に、これらを整えれば、モデルに検出対象を学習させる準備が完了します。

ステップ2:モデル学習と評価

環境構築が完了したら、次はYOLOを使ってモデルの学習を行います。

学習の目的は、対象物の特徴をAIに覚えさせ、検出精度を高め、誤検出を減らすことです。具体的には、人や車といった対象物に枠を付けた大量の画像をAIに与え、正解データを繰り返し学習させます。こうして学習を重ねることで、対象物の特徴をより正確に捉えられるようになり、誤検出も徐々に減っていきます。

学習が完了すると、自動的にモデルの性能評価が行われ、検出精度や見逃し率などの指標を確認できるようになります。

ステップ3:推論テストと最適化

学習と評価が完了したら、実際の画像や動画を用いて推論テストを実施し、モデルの性能を最終確認します。

例えば、工場の製造ラインの映像を入力し、不良品を正しく検出できるかといったテストを行います。この結果をもとにモデルの精度や実用性を評価し、必要に応じて以下のような調整を検討しましょう。

  • モデルサイズの変更や推論の最適化
  • データの追加・再学習
  • 画像解像度の調整

こうしたテストと改善を繰り返すことで、自社の運用に最適なモデルを選定できます。

ステップ4:配備と運用

最適化されたモデルは、実際の運用環境に配備(デプロイ)して活用します。

配備方法には、現場の機器で即時処理を行う「エッジデバイス」や、大規模な処理が可能な「クラウド」などがあり、目的に応じて選択します。

  • 運用開始後は、モデルの性能を維持するために、以下の点が重要です。
  • 継続的な監視: 精度や処理速度を常にモニタリングする。
  • 定期的な改善: 必要に応じて再学習やセキュリティ対策を行う。

これにより、環境の変化や新しいデータに対応し、長期間にわたって安定した運用を実現できます。

まとめ|画像認識AI・YOLOの特徴から導入ステップまで解説

YOLOはリアルタイム処理に適したアルゴリズムとして注目されています。さまざまな業界でエラーや異常検知、従業員による作業の均一化などの成果を出しています。

YOLO導入にあたってはメリット・デメリットを整理し、自社の課題解決にどう活かすかを社内で検討することが大切です。必要であれば専門業者への委託も視野に入れ、自社に合わせて導入を進めましょう。

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執筆監修

株式会社アラヤ

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