マーケティングの知識ゼロでも大丈夫!画像認識AIが売場改善をサポート

活用事例 2021.04.22
in store marketing

「お客様がどんな動きをしているのか分からない…」そんな売場改善の悩みを、画像認識AIが解決します。
カメラ映像をAIが分析し、動線や商品接触を自動で見える化。マーケ初心者でも、売れる売場づくりのヒントが得られます。

ここでは、画像認識AIを使ったインストアマーケティングの仕組みや活用事例、導入の流れまでをわかりやすくご紹介します。

目次

インストアマーケティングとは?

インストアマーケティング

インストアマーケティング

お店の売上アップを目指すとき、商品の魅力だけでなく「どう売るか」も重要なポイントになります。

その店舗内の売場づくりや販促活動全般を指すことばがインストアマーケティングです。
ECの台頭でリアル店舗の価値が問われる中、店舗ならではの購買体験づくり=インストアマーケティングがますます重要になっています。

ここではインストアマーケティングをするための3つのポイントをご紹介します。

売り場レイアウトの工夫

売場のどこにどの商品を配置するかは、お客様の購買行動に大きく影響します。
たとえば、下記のような工夫が購買意欲を高めます。

●入り口付近に目玉商品を置く
●動線の奥に高単価商品を配置する
●関連商品のまとめ買いを誘導する

POP・什器・販促物の活用

POP(店頭掲示物)や什器のデザインも、視線誘導や滞在時間のコントロールに役立ちます。

●アイキャッチの強いPOPで目を引く
●限定感やお得感を演出する販促パネル
●商品を取りやすく見やすくする什器設計

上記のような「つい買いたくなる仕掛け」を作り込むことが重要です。

動線設計で自然に買わせる

お客様が店内をどのように歩き、どの商品に触れるのかも計算のうちです。

●左回り・右回りなど店内動線の設計
●滞留ポイントの配置
●カゴを持たせて買い回り時間を伸ばす工夫

こうした導線設計もインストアマーケティングの重要なテクニックのひとつです。

画像認識AIによる顧客行動分析とは

どんな売場が効果的か?

どんな売場が効果的か?


インストアマーケティングは「どんな売場が効果的か?」を把握するのがカギですが、これまでは担当者の経験や勘に頼る場面も多くありました。
そこで今注目されているのが、画像認識AIを活用した顧客行動分析です。
ここでは、AIによる顧客行動分析でできることや特徴をご紹介します。

カメラ映像から顧客の動きを可視化

店内に設置したカメラ映像を画像認識AIが解析し、来店客の行動パターンを自動で数値化します。

●店内のどこにどれだけ滞在したか
●どの棚の前で立ち止まったか
●商品に手を伸ばしたかどうか

こうした詳細なデータを「勘ではなく数字」で把握できます。

ヒートマップ・滞在時間・棚前行動を計測

AIが集計したデータはヒートマップや行動ログとして可視化可能です。

●店内の混雑エリアや滞留ポイントの把握
●商品棚ごとの注目度ランキング
●滞在時間の長短と購買行動の関連分析

これにより「思った以上に見られていないコーナー」「注目度が高い商品群」なども発見できます。

マーケ初心者でも使いやすい分析支援

AIが自動で行動データを集計・整理してくれるため、専門的な統計知識やマーケティングノウハウがなくても活用可能です。

●データ収集・集計の自動化
●改善ポイントの見える化
●施策の効果検証も容易に

AIが現場のマーケターの代わりに分析をアシストしてくれる点こそが画像認識AIの最大の強みです。

画像認識AIによる顧客行動分析の仕組み

AIはディープラーニングによる物体検出・人物検出技術を活用し、人物の移動軌跡や商品接触動作をリアルタイムに認識します。
これにより肉眼では把握しきれない微細な動線や行動パターンまで計測可能になります。

活用事例|インストアマーケティング×AI画像認識

画像認識AIを使ったインストアマーケティングは、単なる来店人数のカウントだけではありません。
ここでは、実際にどのように売場改善や販促に活用できるのかを事例ごとにご紹介します。

事例①動線を把握して売り場レイアウトを最適化

カメラ映像から来店客の移動ルートを把握し、ヒートマップ化することで「どのルートが多く通られているか」「どこで滞留が多いか」を把握できます。

この情報を元に什器配置や導線設計を見直せば、滞留ゾーンを作り出し、販促効果の高いレイアウト改善が可能です。

さらに、複数の店舗間で異なるレイアウトパターンを比較検証する「店舗ABテスト」も可能です。
例えば、アパレル店舗で男性用・女性用商品の配置順を変えた場合の入店率や滞在時間、購買率の違いをデータで比較検証できます。
こうした検証結果をもとに、最も売上につながる売場設計を科学的に導き出せます。

事例②棚前の離脱行動を分析して陳列を改善

AIでは、「棚の前まで来たけど買わずに離脱した」という行動もAIが可視化します。
離脱率が高いとわかれば、陳列方法・POP・価格帯などの見直しポイントが見えてきます。

このようにマーケターの勘に頼らず、データに基づいた棚割改善が実現します。

事例③商品前での滞在・手に取る動作を可視化

お客様がどの商品前で立ち止まり、どれくらいの時間滞在し、商品を手に取ったかといった細かな動作も、画像認識AIで計測可能です。
「手に取るけど購買に繋がらない商品」なども抽出でき、商品の魅力訴求やPOP改善に役立ちます。

事例④キャンペーン効果をリアルタイムで可視化

販促キャンペーン時の反応もリアルタイムに把握できます。
たとえば「販促POP設置前後の滞在時間の変化」「サンプルコーナー前の通過率」なども計測可能です。

POSデータと組み合わせた購買行動分析を行えば、投資対効果(ROI)も定量的に評価できます。

また、店舗前を通過した人がPOPやデジタルサイネージを注視したかどうか、その後の入店・購入につながったかも分析可能です。
ABテスト形式で販促物の効果を検証し、デザインや訴求内容を継続的に改善できます。

そのほかのアラヤのAI活用事例はこちらからご覧ください。

インストアマーケティング用のAIを導入するメリット・デメリット

インストアマーケティング用のAIを導入

インストアマーケティング用のAIを導入


画像認識AIを活用したインストアマーケティングは、多くのメリットをもたらす一方で、導入前に把握しておきたい注意点もあります。
ここではメリットとデメリットを整理してご紹介します。

メリット

画像認識AIを活用する最大のメリットは、「勘や経験に頼らず、現場の課題を客観的に把握できる」ことです。

●動線・滞在・離脱などの顧客行動が数値で可視化できる
●マーケティング専門知識がなくても改善ポイントが把握できる
●POSデータと連携すれば購買行動との相関も分析可能
●販促の反応や陳列改善効果を短期間で検証できる
●継続的なデータ蓄積により店舗運営ノウハウが蓄積する

特に「現場の肌感覚はあるが裏付けが欲しい」という店舗現場で高く評価されています。

さらに、POSデータだけでは把握しづらかった「商品接触率」「棚前離脱率」「入店率」などの細かな行動指標を分析できるのも大きな強みです。
データを蓄積することで、次回の販促企画や棚割改善にも継続的に活用できます。

デメリット

一方で、AIだからといって「入れたらすぐ完璧に動く」わけではありません。現場ごとに事前設計と運用整備が重要です。

●カメラ設置位置や死角の影響を受けやすい
●照明・混雑状況など環境変化による精度低下リスク
●AI分析の学習モデルは初期段階でデータ収集が必要
●通信インフラやシステム連携設計に専門的な知識が必要
●顧客プライバシーや倫理面の配慮(顔認識は原則NG)

PoC(概念実証)など小規模からスタートし、精度や運用設計を現場で検証しながら進めるのがおすすめです。

インストアマーケティング用のAIを導入する際の注意点

インストアマーケティング用のAIを導入する際の注意点

インストアマーケティング用のAIを導入する際の注意点


AI画像認識を活用すれば、これまで見えなかった顧客行動が細かく分析できるようになります。
ただし、導入を成功させるにはいくつかの注意点も押さえておくことが大切です。
ここでは主なポイントをご紹介します。

カメラ設置位置・死角への配慮が必要

AIの分析はカメラ映像がベースです。
死角が生まれやすいレイアウトや、顧客が頻繁に立ち止まる売り場は、慎重にカメラ配置を検討する必要があります。

●什器の高さ・角度で隠れる視野
●混雑時の人だかりでの遮蔽
●照明条件の影響(逆光・映り込みなど)

PoC(概念実証)段階で、実際の店舗環境でカメラ配置テストを行うのが安全です。

プライバシー配慮・個人情報保護の設計

顧客の顔や行動を映像で記録するため、プライバシーへの配慮は欠かせません。

●顔識別を行わない匿名化設計
●個人情報非取得のAI学習設計
●店頭での利用目的・撮影告知の掲示

個人情報保護法ガイドラインも参考にしつつ、利用者の安心感につながる配慮が求められます。

AI精度のチューニングと運用改善が必要

AIは導入直後が完成形ではありません。
店舗ごとの状況に合わせて、データ蓄積による学習精度向上や設定調整が重要になります。

●シーズンごとのレイアウト変更に対応
●誤検知・未検知のパターン確認
●チューニングサポート体制の整備

「一度作れば終わり」ではなく、柔軟に運用を改善していく姿勢が成果につながります。

現場負担・スタッフ教育コストがかかる

AIで分析は自動化できますが、売場改善に活かすにはスタッフの活用力も重要です。
現場で「データをどう読むか」「改善策にどう反映するか」を学ぶ教育や慣れが必要になります。

導入後も、簡単な研修や活用サポートがあるとスムーズに定着します。

アラヤの強み|AI画像認識によるインストアマーケティング支援

「AIでインストアマーケティングができるとはいえ、現場に合った活用ができるのか…?」と感じる方も多いはず。
アラヤなら、導入から現場定着まで一貫してサポートします。

導入前の現場ヒアリングから丁寧に支援

まずは現場の課題や売場の状況をヒアリングし、最適なカメラ配置や分析項目を設計。
「売上改善のために何を測定すべきか?」といった設計段階から伴走します。

専門エンジニアによる柔軟なAIカスタマイズ

汎用のAI分析ではなく、売場の形状や業態に合わせてAIモデルをカスタマイズ可能。
視線追跡・動線解析・離脱ポイント分析など、目的に合わせたチューニングに対応します。
特にアラヤでは、複数台カメラを連携させる独自技術により、商品棚や柱など死角の多い売場でも精度の高い動線分析が可能です。
これにより、大型商業施設や複雑なフロア構造の店舗でも、精緻な顧客行動データを取得できます。

導入初期のPoC(概念実証)設計については、当社のAI導入支援サービスでも詳しくご紹介しています。

データ活用まで含めた運用支援体制

AIで収集したデータを「どう売上改善に活かすか」までサポート。
販促企画との連携や店舗オペレーション改善への活用も提案し、長期的なPDCA運用を支える体制を整えています。

よくある質問

Q1:AI画像認識によるインストアマーケティングはどんな店舗でも導入できますか?
A: 基本的にカメラを設置できる店舗であれば、多くの業態で導入可能です。
業種・店舗面積・売場構成に応じて、カメラ台数や分析項目を柔軟に設計できます。
大型商業施設から小売チェーンの各店まで幅広く対応可能です。

Q2:既存のPOSシステムや販促システムと連携できますか?
A: 可能です。AIで取得した顧客行動データをPOSや販促システムと組み合わせることで、より精度の高い販促施策の改善に活用できます。
システム連携のご相談も承っています。お気軽にご相談ください。

Q3:AI導入に専門知識は必要ですか?
A: 導入初期の設計や学習設定はアラヤがサポートしますので、現場の担当者に専門知識は不要です。
運用時もわかりやすいダッシュボードを用意しますので、現場でも活用しやすい体制を整えます。

Q4:AIの精度はどのくらいですか?誤検知は起きませんか?
A: 導入初期はPoC(概念実証)で精度検証を行い、店舗環境に合わせてAIモデルをチューニングします。
照明・カメラ位置・混雑状況などを考慮し、実用レベルの精度まで調整してから本番導入します。

Q5:費用はどれくらいかかりますか?
A: 規模・カメラ台数・カスタマイズ内容によって費用は変動しますが、
PoC(概念実証)なら数百万円前後〜、本格導入では規模に応じて数百万円〜数千万円規模が一般的です。
まずは現場状況をヒアリングの上、最適なプランをご提案します。

まとめ

AI画像認識を活用したインストアマーケティングは、従来の「経験や勘頼み」だった売場改善を、データに基づいて誰でも取り組める仕組みに変えてくれます。
顧客の動線・滞在時間・商品への関心を可視化することで、売場レイアウトの最適化や販促施策の効果検証が可能になります。

「AIは難しそう…」と感じる方でも、アラヤならPoCから運用支援まで伴走しますので安心して導入いただけます。
まずは自社の売場でどんな活用ができそうか、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆監修
代表取締役

金井 良太

【経歴】
2000年 京都大学理学部卒業
2005年 オランダ・ユトレヒト大学で人間の視覚情報処理メカニズムの研究でPhD取得(Cum Laude)米国カルフォルニア工科大学、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンにて研究員JSTさきがけ研究員、英国サセックス大学准教授(認知神経科学)
2013年 株式会社アラヤを創業
2020年〜内閣府ムーンショット事業プロジェクトマネージャーとしてブレイン・マシン・インターフェースの実用化に取り組む
【受賞歴】
文部科学大臣表彰若手科学者賞
ET/IoT Technology Award(2019)、JEITA ベンチャー賞(2020)など多数受賞