研究データ管理(RDM)とは?基礎知識や制度対応のポイントを解説

研究データは、研究成果の根拠となる重要な資産です。しかし、近年は研究データの大容量化や共同研究の増加により、「どこに保存したかわからない」「担当者の異動でデータが利用できない」「研究成果の根拠を説明できない」といった課題が顕在化しています。
特に公的資金を利用する研究では、研究データ管理(RDM)やデータマネジメントプラン(DMP)の整備が求められる場面が増えています。2025年度以降は即時オープンアクセス(OA)の方針も本格化し、研究データ管理は一部の研究者だけの課題ではなくなりました。
本記事では、研究データ管理の基本からDMPの考え方、制度対応のポイントまで解説します。
研究データ管理(RDM)とは?
基礎知識と今求められる背景

まずは研究データの定義やRDMの目的、研究データ管理が求められる背景を整理します。
そもそも「研究データ」とは何を指すのか?
「研究データ」という言葉は、文脈によって指す範囲が異なります。京都大学では、「研究公正」と「研究データ管理(RDM)」の2つの文脈に分けて整理しています。
- 研究公正:発表した研究成果の根拠となる研究資料等
- 研究データ管理(RDM):研究活動の過程で収集・生成された情報(デジタル・非デジタルを問わない)
参考:「京都大学における研究データ管理(RDM)」(https://rdm.kyoto-u.ac.jp/docs/introduction/summary/)
本記事では、研究データ管理(RDM)の文脈における研究データを対象として解説します。
「研究データ管理(RDM)」の定義と目的
研究データ管理(RDM:Research Data Management)とは、研究データの生成から保存、整理、共有、利活用、廃棄までを計画的に管理する取り組みです。単にデータを保存するだけではなく、後から必要なデータを探し出し、再利用できる状態を維持することが重要です。
RDMの目的は、大きく次の3つに整理できます。
- 研究効率化
- 研究不正防止・説明責任への対応
- 研究成果の利活用促進
研究データを継続的に管理できる状態に整えることで、次のような効果が期待できます。
- 必要なデータを迅速に検索できる
- 学生の卒業や研究者の異動後も研究資産を継承できる
- 再解析や追加検証を容易におこなえる
- 共同研究における情報共有を円滑にできる
- 研究不正防止や説明責任に対応できる
例えば、保存場所や命名ルールが統一されていれば、学生の卒業や研究者の異動後でもデータを活用できます。反対に、個人のPCに散在している状態では、必要なデータを探すだけで多くの時間を失ってしまいます。
研究データ管理の義務化が進む理由
研究データ管理は、研究室独自の取り組みではなく、国全体で制度整備が進められています。
その背景には、次の要因があります。
- シミュレーションや計測機器の高度化によるデータ量の増加
- 共同研究や国際共同研究の拡大
- 研究不正防止や研究再現性への社会的要請
- オープンサイエンス推進による研究成果の共有
- 公的資金による研究成果の社会還元
研究データの管理が不十分な場合、再現実験が困難になるだけでなく、研究成果の説明責任を果たせなくなる可能性があります。
内閣府は、公的資金によって生み出された論文や研究データなどの研究成果を、国民に広く還元すべきものと位置付けています。さらに、2025年度から新たに公募を行う一部の競争的研究費では、学術論文および根拠データの即時オープンアクセスが求められています。
参考:『「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」の実施にあたっての具体的方策について』(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/cstp/hosaku_setsumei.pdf)(※1)
研究データ管理におけるデータマネジメントプラン(DMP)の要点

研究データ管理を実践する上で重要になるのが、データマネジメントプラン(DMP:Data Management Plan)です。近年は、公的資金を伴う研究を中心にDMPの整備が進んでおり、研究データの管理・利活用方針を事前に明確化することが求められています。
ここでは、DMPの基本的な考え方や制度上の位置付け、メタデータとの関係について解説します。
DMP(研究データ管理計画書)の定義と本来の目的
DMPとは、研究過程でどのような種類のデータを、誰が、どのように取得・管理・利活用するかを整理した研究データ管理計画書です。
研究開始時点で、次のような事項を整理します。
- どのようなデータを取得するか
- 誰が管理するか
- どのように取得・管理するか
- どのように利活用するか
- 公開するか非公開とするか
DMPは、研究者による研究データの適切な管理や、効率的な研究進捗の把握を主な目的として作成されます。また、資金配分機関にとっては、研究成果の公開・活用による価値最大化や、データの効率的かつ適切な管理を促す目的があります。
原則として研究開始前に作成し、研究の進捗に応じて適宜更新される文書です。そのため、研究開始時に一度作成して終わるのではなく、研究期間中も継続的に見直しながら運用することが重要です。
公的資金におけるDMP作成義務化の経緯と現在の位置づけ
国は、研究データの管理・利活用に関する制度整備を段階的に進めてきました。
2021年には、統合イノベーション戦略推進会議により「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」が示されました。同資料では、公募型の研究資金の新規公募分について、DMPおよびDMPと連動したメタデータ付与の仕組みを2023年度までに導入する方針が掲げられています。
また、2025年度から新たに公募を行う一部の競争的研究費では、学術論文および根拠データの即時オープンアクセスも求められています。(※1)
そのため、公的資金を用いる研究では、DMPの作成や研究データの管理・利活用を研究開始前から意識しておく必要があるでしょう。
「DMP項目」と「メタデータ項目」の連動
研究データを管理する際には、DMPとメタデータを連動して考えることが重要です。
メタデータとは、研究データを説明する情報のことで、次のような項目が該当します。
- 研究データの名称
- 説明
- 管理者や連絡先
- 所在場所
- 保存・公開・共有の方針
メタデータが整備されていれば、研究データの内容や所在を把握しやすくなり、将来必要になった際の検索や再利用も容易になります。
また、DMPとメタデータには共通する項目が多いため、別々に管理するのではなく、一体的に設計することが望ましいとされています。DMP作成時点でメタデータ項目も意識しておくことで、研究者の入力負担を減らしやすいです。
なお、メタデータを整備しても、ファイルの保存場所や命名ルールが統一されていなければ十分に活用できません。研究データの保存ルールについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
参考:「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方について」(内閣府・科学技術・イノベーション推進事務局)(https://www8.cao.go.jp/cstp/datapolicy_outline.pdf)
オープン・アンド・クローズ戦略に基づく
研究データ管理の評価・報告基準

研究データ管理では、単にデータを保存・公開するだけでなく、研究データをどのように管理し、どのように利活用するかが重要視されています。
近年は、公的資金による研究成果の公開や利活用が求められる一方、個人情報や知的財産など慎重な取り扱いが必要なデータも存在します。そのため、研究データの公開・非公開を適切に判断しながら管理する「オープン・アンド・クローズ戦略」の考え方が重要です。
ここでは、研究データ管理に対する国の考え方や評価の方向性、管理状況の把握方法について解説します。
評価体系への導入と「オープン・アンド・クローズ戦略」の定義
内閣府の資料では、論文や学会発表などの従来の評価指標に加え、研究データの管理・利活用に関する取組状況を評価体系に導入することが示されています。
オープン・アンド・クローズ戦略とは、研究データを一律に公開するのではなく、公開可能なデータは共有・公開し、個人情報や知的財産など公開が適切でないデータは非公開とする考え方です。
評価では、公開件数の多さだけを見るのではなく、オープン・アンド・クローズ戦略に基づき、研究データを適切に管理・利活用しているかが重視されています。
そのため、研究データ管理では「どれだけ公開したか」ではなく、研究データの特性に応じて適切に公開・共有・非公開を判断することが重要です。
研究データの管理状況を把握する4つの区分
研究データは、単純に「公開」か「非公開」かで分類されるものではありません。
内閣府の資料では、研究データの管理状況を把握する区分として、
- 公開件数
- 共有件数
- 非共有・非公開件数
- 期限付き公開予定件数
が示されています。非公開の研究データも管理対象に含まれる点が重要です。
そのため、研究データ管理では公開の有無だけでなく、研究データの性質や公開方針に応じて、適切な管理区分を選ぶ必要があります。
資金配分機関ごとの規定への準拠(注意喚起)
DMPの項目や運用ルールは、すべての研究費制度で共通ではありません。内閣府の資料では、資金配分機関が各事業の特性に応じてDMP項目やメタデータ項目を定めるものとされています。
そのため、実際の運用では、自身が利用する研究費制度の公募要領や実施要領を確認することが重要です。
制度対応を進める際は、所属機関のURAや研究推進部門など、研究支援部門と連携しながら進めましょう。
出典:「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」(内閣府・科学技術・イノベーション推進事務局)(https://www.mext.go.jp/content/20210608-mxt_jyohoka01-000015787_06.pdf)
まとめ|研究データ管理は研究の価値を高める基盤
- 研究データは論文だけでなく、実験過程や解析情報を含む研究資産全体を指す
- 公的資金を用いる研究では、RDMやDMPへの対応が求められる場面が増えている
- オープン・アンド・クローズ戦略に基づく適切な管理が求められている
研究データ管理は制度対応のためだけにおこなうものではありません。研究成果の再現性を高め、知見を継承し、研究成果の価値を最大化するための基盤です。
制度対応を進める際は、所属機関の研究データ管理ガイドラインや研究支援部門の方針も確認しながら運用することが重要です。
まずは所属する研究室や組織の研究データ管理ルールを確認し、保存方法や責任分担、メタデータ整備など、不足している点を洗い出すことから始めてみましょう。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
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