フォークリフトなどの車両と人の接触防止への画像認識AI活用

フォークリフトなどの車両と人の接触防止への画像認識AI活用

1. 作業現場における車両と人の接触事故

製造業の工場や、物流や運送業界の倉庫では、フォークリフトやトラック、AGV(無人搬送車)・AMR(自律型恊働ロボット)など、運搬や作業用の車両が多く走行しています。また、建設業界の建設現場でも、クレーンなどの建機・重機やダンプカーなどの車両が使われています。それぞれの現場では、車両と人が同じ場所を行き交うため、接触する危険性が高く、重大な事故につながることも多くあります。

例えば、フォークリフトによる事故には、以下のようなケースが頻発しています(厚生労働省事故調査より)。
・運転手が荷物に隠れた作業員に気づかずに激突
・方向転換の際に作業員を巻き込み激突
・通路の死角から車両が飛び出し通行中の作業員に衝突
・旋回した車両と壁の間で作業員が挟まれ・巻き込まれ
特に、フォークリフトの原因による労働災害のうち「挟まれ・巻き込まれ」「激突され」による事故が全体の約6割を超え、それらが原因で死亡事故に至ったケースが半数近くを占めています。

このような災害がもたらす被害は、従業員の治療や休業補償、車両や設備の修繕のほか、工程の停止による損失など、広い範囲に及びます。さらには企業コンプライアンスが問われる事態にもなり得ます。接触事故防止は、ますます重要性が高まっています。

2. 車両と人の接触防止の従来手法と課題

作業車両と人の接触防止のために、作業現場ではさまざまな方策が講じられています。
その1つは、監視員の配置です。工場や倉庫内に人を配置し、交通整理を行います。ただし、工場や建設現場などは敷地が広大であることも多く、その場合、常にあらゆる箇所に人を配置して監視することは現実的ではありません

そのほか、車両と人の稼働エリアを分ける「人車分離」という安全対策もあります。しかし、人が車両用通路を横断する必要があったり、人の作業エリアに搬送車が侵入したりして、完全に接触を防ぐことはできません。

センサーによる検知システムを導入するケースも増えています。車両にセンサー(検知機)を装着し、タグを持つ作業員が近づくとセンサーが検知し、アラームで警告するシステムです。センサーは高く、接触防止の効果は向上しますが、すべての車両に装着するセンサーと人が持つタグなど、設備導入にかかるコストが課題です。

3. 車両と人の接触防止対策をAIで実現

車両と人の接触防止システムを、アラヤの画像認識AI技術により実現します。カメラで撮影した画像からAIが人を認識し、車両との距離が一定以内に近づくとアラームで警告します。検知する手法はカメラの設置方法の違いから2つの方法があります。

定点カメラによる接触防止

定点カメラを対象敷地内の要所に設置し、人と車両が行き交う様子を俯瞰して撮影します。使用するカメラは、すでに設置されている監視カメラや、新たに設置する一般的な固定カメラです。画像に写る車両と人が一定距離以下に近づいたことを検知することで、アラームを出すことが可能になります。

【デモ動画:交差点付近の車・歩行者・バイク・自転車をAIが認識している様子】
車・歩行者・バイク・自転車をAIが認識し、四角い枠が表示されます。歩行者・バイク・自転車が交差点エリア内に侵入すると、枠の中が黄色になります。さらに、車両と接近すると枠の中が赤色になります。
この技術を工場や倉庫、工事現場などの現場に適用すると、AIが行き交う車両と人の位置をトラッキングし、接近を検知するとアラームを出すことで接触事故を防止します。アラームの出し方としては、車両上のパトランプを点灯する、車両を自動停止させる、などの方法が考えられます。そのほか、敷地が広大な場合は、複数の地点で同時に監視することも可能です。

【デモ動画:人と車両の動きを予測した衝突予知】
以下の動画は、人とAGV・AMRを模したロボットの衝突予知のデモです。
人とロボットに四角い枠が付いているのは、それぞれをAIが検知している様子です。
右下のマップ上に、それぞれの位置・進行方向・速度がベクトルで示されています。
この先でロボットと人が接触しそうな状況とAIが判断すると、デモ動画上は接触しそうな人の枠が赤色になります。工場や倉庫内では、AGV・AMRと人との接触を予知し、アラームで警告、またはロボットの速度を低減させます。また、フォークリフトの急加速や急旋回といった危険行動も監視できます。このようにして、車両事故の危険回避を可能にします。

車載カメラによる接触防止

フォークリフト・建機・トラックなどの車両上にカメラを搭載し、人を検知することも可能です。人が一定距離以下に近づいたときにアラームを出します。特にフォークリフトなどは前後移動だけでなく旋回も多く、進行方向が頻繁に変わるため、車両の複数箇所にカメラを設置することが理想的です。
車載カメラによる接触防止システムは、特に定点カメラの設置が難しい環境や、移動範囲が広い敷地などに適しています。作業員へのセンサーの装着が不要というメリットもあります。

工場や倉庫内、建設現場を走行する車両(建機・作業車・フォークリフト・AGV・AMRなど)に搭載したカメラに人や物を認識するAIを適用することで、接触の危険性を予知するとアラームを出す・車両を停止させるなどが可能になります。また、アラヤのエッジAI技術により、例えば車両に搭載可能な小さなデバイス・チップ上でAIを軽くし高速で動作させるようにすることも可能です。

4. まとめ

この記事では、工場や倉庫、建設現場など、車両と人が行き交う場所での接触事故を防止するためにAIを活用し、安全管理を強化する方法について解説しました。アラヤでは、安全管理が求められる現場への画像認識を始めとしたAI技術導入をサポートします。お気軽にご相談ください。

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